豊島事件と産廃問題

No.34 直島小爆発の示唆するもの 2004・2・17

1月24日に豊島産廃を処理する直島の溶融炉2号炉で小爆発が起こりました。ビルの 5階ほどもある炉の頂点で鋼鉄製のカバーが圧力でゆがみ、60センチほど浮き上が っています。本格操業前の昨年8月に起こった事故は「異常燃焼」と表現されました。 今回は「小爆発」。

 あってはならないことですが今後「大爆発」が起こらないとも限 りません。

 その1週間後の豊島原論で溶融炉に詳しい環境問題フリーライターの津川敬さんの強 調されたことは「そもそも溶融という技術は本来開発されてはならない技術だった」 ということです。鉄を溶かすような高温で雑多なゴミを燃やすというのはあまりにリ クスが大きいということです。

  しかし、同時に豊島産廃の無害化にはこの技術を受け入れざるをえなかった(溶融以 外の方法はなかった)という二律背反のなかで、溶融処理を選択せざるを得なかった という現実もあります。それほど豊島産廃はひどい状態だということです。

  ガス化溶融炉の分野では新日鉄が一人勝ちの状態だそうです。ところが、豊島産廃処 理の入札に新日鉄は参入しませんでした。先日放映されたニュース番組のインタビュ ーによると「豊島産廃はビジネスとしての成立が難しい」というのが新日鉄側の言い 分だそうです。

  1回目の入札に応じる企業はゼロでした。その後、県が数社にあたって唯一参加を申 し出たのがクボタでした。当時、クボタは別件で指名停止処分を受けていたので、そ れが何らかの影響を与えたのかもしれません。随意契約という形式でクボタが引き受 けました。

  豊島の不法投棄現場に建設した前処理施設等で前処理をした産廃を専用船で直島に運 び、三菱マテリアル敷地内に建設した中間処理施設で溶融処理を行うことになりました。

  溶融炉もメーカーによって様々な方法があるそうで、クボタの表面溶融炉というのは もともとは灰溶融のための技術で、3センチ以下の均質になるまで小さくしてから炉 に入れる方法だそうです。

 1250℃前後という温度は溶融炉としては低温という特徴も あります。 小さくしてから炉にいれる必要があるので、豊島側で掘り出した産廃を攪拌し、溶融 を助けるため生石灰を混ぜて水分を飛ばす。それから豊島側での前処理施設での処理 を経て、専用運搬船で直島に運ばれるという工程が必要になります。

 クボタの表面溶融炉を使うことになったので生石灰を混ぜる必要があった。豊島側 での前処理も必要だったということになります。他のメーカーの炉だったらもっと大 きなまま入れることができて、これほど事故は頻発しなかったのでは?とも思います が、実際問題として手をあげるメーカーがなかったのですから、単なる仮定法過去完 了になってしまいます。

  日本最大の不法投棄となった青森・岩手県境事件は雪解けを待って撤去が始まるそう です。こちらも同じように溶融処理をするのでしょうか?メーカーはどのようにして 選定するのでしょうか?豊島ほど長期間にわたる野焼きや放置がなかったので、これ ほど難しい処理は必要ではないのでしょうか?

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  2月15日に溶融炉の小爆発の原因や対策を話しあう検討会が開催され、調査結果が 報告されました。報告書によると、産廃を乾燥させるため豊島側で加える生石灰とア ルミなどの金属が化学反応を起こして水素が発生。廃棄物に含まれる水素も一緒になり、 廃棄物と機器類などとの摩擦で発生した静電気に引火した可能性が高いということ です。

  事故発生から3週間、再開のめどはたっていないどころか、豊島での産廃掘り出しか ら溶融まで、一連の処理過程の問題点を再検証することになっています。たぶん、数 ヶ月はかかるのでしょう。県側の担当のN課長さんもT部長さんも処理に追われてい るのか、元気がありませんでした(偏見に満ちた私見かも*_*)。

  いやはや、行政の瑕疵による原状回復はタイヘンな仕事です。豊島と青森・岩手県境 事件はあまりに大規模で、あまりに有名になってしまったので総費用の2/3程度は 国の補助金や交付金が充てられますが、全国いたるところにある不法投棄の原状回復 のためにガス化溶融炉を作るわけにはいきません。「過去の負の遺産」をプラスマイ ナスゼロの段階にするのは膨大なエネルギーと技術とお金、そして、時間がかかるこ とになります。

 

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