研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

 

No.11 日本における「持続可能な発展」の10年  2002年6月9日 法政大学市ヶ谷キャンパス−

  「日本の環境政策はここ10年ほとんど進んでいない」 by 寺西俊一一橋大学教授

 6月9日に、法政大学市ヶ谷キャンパスで、環境系3学会合同シンポジウム「環境政策研究のフロンティアV」が開催されました。個人的には一昨年に続いて2度目の出席でした。(学会に出席といってもフロアで聞いているだけなので、楽しみはキャンパス巡りです。国立はどこも同じような感じですが、私立は特色があってオモロイです。)

 環境系3学会というのは、環境法政策学会と環境経済・政策学会・環境社会学会のことです。いずれも数年前に設立された新しい学会です。「環境政策研究のフロンティア」というんだから、研究最前線なんでしょうか?

 でも、寺西俊一先生の「日本はやるべき10のうち、1.5くらいしかやっていない」という言葉が日本の環境政策先送り方針を象徴していました。日本は政治が悪いのか、それとも、官僚が悪いのでしょうか?

 あと、経団連・環境技術部長の高橋秀夫さんの「歯に衣きせぬ」言い方が興味深かったです。温暖化に熱心なEU諸国、ベルギーとかドイツとかの政策を日本も見習うべきだといいますが、高橋さんにいわせると日本で20%もCO2が削減できるはずがないとのこと。

 これも真実でしょう。6%削減というのは1990年比ですが、90年というのは東西ドイツの統合の年だし、イギリスでは非効率な国営電力会社を民営化した年です。東ドイツの効率の悪さを改善したり、石炭が多かった燃料を天然ガスにかえれば、20%削減は可能かもしれないが、石油危機後の省エネが進んだ日本で現在より20%も削減するなんて、所詮無理、とのことでした。

 でも、京都議定書は国際公約だし、日本政府はすでに批准しました。あとは発効を待つだけです。これからは具体的な政策が必要になります。

 学者さんは理屈にこだわりますが、実行できそうもない理論は空しい。やはり、現実の政策のなかで実行可能な政策としての実現可能性にこだわりたいです。

 温暖化対策は総合政策です。費用対効果として効率的な削減策が必要です。日本は炭素税でも排出権取引でも理論上の対立を超えて実現可能な政策はぜひとも政策に採り入れてほしいと思います。

 実現可能なレベルで炭素税や排出権取引を採り入れても公約達成は難しいと思います。それなのに、経済的手法を拒否し、経団連の自主行動計画や国民各層の努力に頼るばかりでは、アメリカと同じ、最後は離脱するしかなくなってしまいます。

 

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