消費者がかわらなきゃ!!

No60 エコタウン事業のぎまん〜多島美を守る方法は?〜 2004・7・24

 
           <瀬戸内海の初日の出>

 平成9年より経済産業省によって「エコタウン事業」が創設されています。 エコタウン事業というのは、地域の環境産業の育成と廃棄物の最終処分量の削減を狙っ た国の施策で、計画が承認された地域の環境関連施設には補助金が交付されます。 http://www.meti.go.jp/topic/data/e10209aj.html  http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=1902&hou_id=2449

「北九州エコタウン事業」が比較的有名だし、成功例にも挙げられるようです。 http://www.city.kitakyushu.jp/~k2602010/sesaku/ecotown.html  

 でも、例えば山口県エコタウン計画(2001年3月承認、補助金額12億8000万円)では、 「ゴミ焼却灰セメント原料化施設」としてセメント原料化施設を稼働させ、年間5万ト ンの処理能力をもちながら、実績は3万トン。 原料となる焼却灰の一部しか供給されなかったせいです。

 香川県の豊島産廃の処理をしているのが、隣の直島ですが、直島もエコタウン事業に 承認されています。 内容は産廃処理で発生する溶融飛灰の再資源化施設と有価金属リサイクル施設による 有価金属回収化事業です。2002年3月に承認され、補助金額は1億5049万円 です。 http://www.mmc.co.jp/env/topics/topi001.html  

  香川県知事は7月20日の会見でエコタウン事業による地域活性化を期待すると述べ ています。
http://www.shikoku-np.co.jp/news/administration/200407/20040720000361.htm

 「エコタウン事業」は本来的な矛盾をかかえています。 ちょっと(だいぶ)ヘンな政策です。

  長い間野焼きされ野積みされてきた豊島産廃の処理は簡単ではありません。溶融炉メー カーがどこも逃げてしまって、当時入札停止処分を受けていたクボタが随意契約で引き 受けたという経緯があるくらいです。

 その表面溶融炉2基も昨年秋の本格操業以来、小爆発を何度か起こしています。1月 24日の小爆発(大爆発かもしれない)では原因究明のため4月まで操業停止してい ました。 この2基の表面溶融炉を使って産廃を溶融したあとに出来るスラグや溶融飛灰を再資 源化するのが「直島エコタウン事業」です。

  このクボタ製・県の費用で建設した表面溶融炉2基とは別に、且O菱マテリアル直島 製錬所内に溶融飛灰を銅精錬施設を用いてリサイクル処理するための溶融飛灰資源化 施設と、シュレッダーダスト等の前処理(焼却溶融)を行う有価金属リサイクル施設 を建設しました。 これらの施設がほぼ完成しました。これが、7月20日の香川県知事定例会見による 「直島の活性化期待」という発言につながっています。

  でも、この有価金属リサイクル事業は「1万円をかけて10円もうける」ような仕事 ではないでしょうか?スラグ(1トンのスラグをつくるのに1万円かかっている)は使い道に困っているようだし、重金属は商売になる程度の量出てくるのでしょうか?

 そのうえ、原料となる産廃がなくなるとそれさえできない。 要は「『原料』となるゴミの発生を前提とした」リサイクルシステムなのです。 「エコタウン事業全てが」とはいいませんが、市場経済では回っていけないゆえに、 国の補助金の対象としている。しかし、多額の税金を投入して目指すのは「ゴミの発 生を前提とした、大規模施設による大規模リサイクルシステム」のようです。 豊島産廃処理は特殊です。ガス化溶融しか手段がなかったのはよくわかります。

 でも、そのために数十億円か数百億円かかけて巨大処理施設を建設する。大きすぎる施設をつくったのでゴミが足らなくなりそう・・。 だからそれまでの「県外産廃搬入原則禁止の指導要綱」に逆行する「香川県における 県外産業廃棄物の取扱に関する条例」をつくってまで、県外の産廃を受け入れる。

  そこまでして「エコタウン事業」という美名で斜陽産業(銅精錬の斜陽化で企業城下 町である直島は人口減が著しかった)の救済を行う。

  そして、今回ハード事業(=処理施設の建設)を受けて行った会見では来年1月から 完全施行される「自動車リサイクル法」によってリサイクルが義務づけられた車の シュレッダーダストの受入を行うと表明しました。

  そもそも豊島の雑多な産廃の例として「シュレッダーダスト」がよく取り上げられて いました。その処理を行うために新たに県外からシュレッダーダストを受け入れる。 なんかヘン?とてもヘン?

 瀬戸内海はきらきら光ってとてもきれいです。エーゲ海と瀬戸内海とどっちがきれい? エーゲ海の人口減対策としてミコノス島に工場を誘致するでしょうか。

  瀬戸内海のような閉鎖水域は汚してしまうと、回復には時間がかかります。 瀬戸内海は産業がなくて、人口が減っている。それはよくわかる。でも活性化のため の呼び物は相も変わらぬ旧来型の工場の誘致でしょうか? 「多島美」を守る政策こそ第一に考える方法でしょう。

  「農業・漁業の地産地消」「エネルギーの地産地消」 いくらでも方法はあるはずです。補助金をかっぱらってきて工場を建てることだけが 地域振興ではないはず。 「ゴミの発生を前提とするエコタウン事業」は矛盾の固まりです。 ・・・・といくらいっても「犬の遠吠え」? 官でも企業でもない市民の声を届けるのは容易なことではありません。

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