エネルギー政策と京都議定書

No.19 なぜ地球温暖化問題を問うのか 〜本当に大切なものは、目にはみえないのだよ〜 2004・6・23

「あす世界が滅びるとも、今日あなたは林檎の木を植える」
作家の開高健氏が生前よく色紙に書いていた文言だそうで、開高氏の言葉かと思っていましたが宗教改革のマルティン・ルターの言葉だったそうです。
http://plaza18.mbn.or.jp/~kaiko/

  石原東京都知事が作家仲間(?)の開高健が好んでいたというこの言葉を引用して環境問題を語ったとき、けっこう感激しました。

昨日「京都議定書は実現できるのか」(石井孝明)という本を読んでいて久々にこの言葉をみつけて気持ちが新たになりました。

 「本当に大切なものは、目にはみえないのだよ」というのはサン=テグジュペリの 『星の王子様』のなかの言葉です。

「地球温暖化問題」「京都議定書遵守」なんて大騒ぎをしても「いま生きている私 たちが被害者になる可能性はほとんどない」。温暖化の影響はまだ見ぬ将来世代が負うことになるのです。

  温暖化の影響が表れるのは21世紀の後半以降。
日本でマラリアが増えたって防疫 体制が整っているのでそれほど死者が増えることもないでしょうし、南太平洋やイ ンド洋の島嶼国、ツバルやモルジブのように国土が沈んでしまうこともまず、ないでしょう。

  今いきている私たちはもっと若い世代も含めて、悪しき年金制度で被る被害の数 分の一の被害を被ることもないでしょう。化石燃料は全て輸入に頼っているので、 あと数十年もすると燃料費は高騰するでしょうが、石油が枯渇気味になったらなったで今度はもっと安い石炭を使うような気がしますし・・・。

 となると、途上国が参加せず、最大のCO2排出国であるアメリカが離脱し、その うえEU諸国がCO2を削減する費用の数倍の費用がかかるにも関わらず、6%の 削減義務を負わされている日本だけが産業や国際競争力を犠牲にしてまで、京都議定書を遵守するのは割が合わないような気もします(経済産業省的な意見かしら?)。

数字合わせの「地球温暖化対策推進大綱」の達成が難しくなったので3度目の改正を行うようですが、新聞報道を見る限り、政府は「もはや達成は不可能」と開き直った感もあります。(>_<)

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自分が生きている間のことを考えるだけで大変なのに、「自分の死後の世界に思い を寄せて、いま行動をする」というのは途方もなく難しい気がします。それでも、 環境に関心を寄せる人たち(いわゆる環境オタク)は「それでもなにが何でも・・」と主張するでしょうが、全ての人が同じような行動をとるはずはない。

  個人的な見解ですが、環境問題は性善説では解決できない、やはり政策誘導が必要な気がします。 性善説を信じるなら刑法は必要なくなるわけですし、経団連の「自主行動計画」の 取り組みで温暖化は防止できることになりますが、実際にはCO2は減っていません。

 決して草の根レベル、小さな環境を守る努力の積み重ねを否定するわけではありませんが、市民レベルのボランティア的な小さな努力の積み重ねには限界がある と思います。

  温暖化対策は、(化石燃料による)エネルギー使用を抑制し、環境に優しいエネルギー源へと転換させていくこと。それも「知らず知らずのうちに地球に優しい 選択ができていた」というような大きな施策のもとでの市民レベル、地方レベルの小さな努力の積み重ねで進めなるしかない、と思っています。

  この忙しい毎日の生活のなかで、だれもが朝も晩も環境のことを考えて生活して いるわけではありません。「環境のためにライフスタイルをかえる」なんてこと をできる人は(いたとしても)ごくわずかだと思います。

「大きな施策」というのも抽象的で、これまで5年以上も霞ヶ関の官僚や学者さん たちや企業幹部が考えて考えてなお、画期的な案が出てきたわけではないのですから、難しいのはよくわかります。

 エネルギー消費が増えているのは民生・運輸部門ですから、「個人の生活を国が規制できるのか」という問題もあります。

  環境省で案が出されるたびにあっちやこっちから反対意見が出ていつまでたっ ても実行できそうもありませんが、「大きな施策」とは炭素税や排出量取引といった「経済的手法」でしょう。

 そして、いつもでたっても実行できないのは税収の使い道に対する国民の不信感 が大きいからでしょう。これまでの硬直化した、無駄の多い税金の使い方に対 するしっぺ返しのような結果ともいえます。

  地球温暖化問題を国際レベル(途上国問題、アメリカの不参加、数値目標の問題) でも国内レベル(民生・運輸レベルのエネルギー消費、自然エネルギーの推進、 森林の吸収源の問題など)でも解決に導く「画期的な方法」は見いだせそうもありませんが、「エネルギーも地産地消」「コミュニティ、地方自治体レベルで変 えていく」というのも一手法かもしれません。

  そのためにも建前ではなくホンキでNPOが力をつけること。
@「政策提言能力」 を身につけること、
そしてAそれを率先して実践していくこと、これだけは間違 いないと信じています。

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