経済的インセンティブ

No.1  環境税とは?

 環境にかかる費用は外部不経済といって価格に含まれていませんでした。環境のような共有資源はフリーアクセスを認める限り、どうしても皆がどんどん利用しようというインセンティブを阻止できません。コモンズの悲劇と呼ばれるものです。どうしても費用を負担せずに資源を利用して収益だけを受け取ろうとするインセンティブが働きます。その処方箋として環境利用者に環境資源のコストを負担させる工夫が、課税という方法です。

 環境税について最初に提唱したのはピグーという厚生経済学者です。1920年代、蒸気機関車の火の粉によって沿線の森に火災が発生するのを憂慮しての発想だったそうです。 ピグー税の目的は外部不経済を内部化することですが、課税だけで内部化することはできません。理論通りのピグー税は規範としてのみの存在です。

 次に考案された実行可能な次善の環境税はボーモル=オーツ税です。CO2排出削減目標を炭素税を導入して達成する場合の税はボーモル=オーツ税になりますが、税率を調整してその目標を達成することは、政治的問題になりやすい税率の試行錯誤となり容易ではありません。

 現在北欧諸国を中心に8ヵ国で炭素税が導入されていますが、現実の環境税のなかでも明確にボーモル=オーツ税といえる事例はありません。経済学でいうところの最適な資源配分を達成する政策課税として環境税を正当化することは難しい。

 だから、炭素税も税金なんだという原則にもどって考える必要が出てきます。税金の機能は公共サービスを提供するために必要な資金を調達することです。経済学でいうところの排出削減効果を望むような高率課税は困難なので税収を利用することによって目標を達成する、あるいはNo.2で説明するポリシーミックスとして他の経済的手法と組み合わせる方法が考えられています。

 温暖化防止のためには炭素税はぜひとも必要と考えますが、水戸黄門の印籠ではないのですから、実現可能性を考えて低率課税、他の政策とのポリシーミックスが必要だと思います。

<< 前へ ==== 次へ >>

「経済的インセンティブl」の目次へ戻る