経済的インセンティブ
No.2 排出量取引の仕組み
排出量取引(Emissions Tradingなので排出量の方が適切ですが、排出権取引ともよく言われます)は京都議定書第17条に定められ、COP6,COP7でその運用が決定されたものです。CO2排出枠が決められた国の間で、排出枠の一部の移転または獲得を認める制度です。
先進国同士の間で排出枠の一部の移転が認められていますが、その国に認められた排出量の10%以下に押さえる運用ルールが合意されたように国内対策に対して補足的なものと位置づけられています。日本は排出削減コストが高いので、削減コストの低い国、たとえばロシアの排出枠をいっぱい買うことにすれば国内対策が不要になってしまうからです。
EUは域内企業の排出枠を決めて排出量取引を導入する案を示しています。イギリスでは2002年4月から排出権取引を始めました。日本でも商社や電力会社が模擬取引を実施し、準備を進めています。国内排出量取引です。企業や産業別に排出枠をきめて国内で排出権取引をするか、国が直接、企業に排出枠を割り当てて先進国間で企業間取引をすることも考えられます。炭素税は抑制効果がイマイチ不明確(税率という単一のシグナルによる不確実性を伴う)ですが、排出量取引は総量規制なのでわかりやすいし、経済的にもより効率的です。ただ、すべての排出源に課すことはできませんし、初期配分(グランドファザリングかオークションか)についても議論されています。
http://www.env.go.jp/press/file_view.php3?serial=1031&hou_id=1514
イギリスでは2002年4月に世界初の排出量取引市場をスタートさせます。EUは2005年からスタートさせる予定です。表に示すように両制度は大きく異なっています。イギリスは京都議定書での排出量削減目標が達成可能とみられるので、排出枠をめぐって商売が可能です。EUとイギリスのさや当ては新しい市場の可能性の裏返しといえます。20兆円ともいわれるCO2取引をめぐっては国家間、企業間の市場間競争がすでに始まっているそうです。
排出権取引市場の主要な相違点(日経エコロジー2002年1月号より)
<京都議定書第17条>
締約国会議は、特に排出量取引に関する検証、報告及び責任に関し、関連する原則、仕組み、規則及びガイドラインを定める。附属書Bの締約国は、この議定書の第3条に基づく約束の履行のために、排出量取引に参加することができる。いかなる当該取引も、第3条に基づく数量化された排出抑制及び削減に関する約束を果たすための国内的な行動に対して補完的なものである。