経済的インセンティブ

No.21 スチュワードシップ  〜新旧聖書にみられる奉仕の精神の環境への応用〜 2004・7・29

  気まぐれな性格なもので、「にわか仏教徒」が「にわかカソリック」愛好者になって しまいました。 いまベストセラーの「ダ・ヴィンチ・コード」を読むとすぐ聖書ファンになるなんて 我ながら節操がない。とはいえ、「ダ・ヴィンチ・コード」はミステリーを読みなが らのキリスト教史+美術史として面白かったです。http://www.kadokawa.co.jp/sp/200405-05/  

  南フランスの人口200人の寒村「レンヌ=ル=シャトーの謎」それに「マグダラの マリアの謎」「秘密結社・シオン修道会」なんて単語を並べただけでも、ミステリアス。 1885年、貧乏なソニエール神父が本当に財宝を発見したのか、あるいは、マグダラの マリアの謎を解明したか?なんてワクワク。 たしかBBCテレビの製作番組を見た覚えもありますが、当時は気にもとませんでした。 謎が謎を呼びそうなミステリーでなかなか興味深い話です。

http://www.voynich.com/rennes/
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4760114432/249-4062772-2341948

日本人が苦労して南仏人口200人のレンヌ=ル=シャトーに出かけたサイトが以下です。
タクシーもホテルもないようなへんぴな場所のようです。
http://www.voynich.com/rennes/visit.html

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以上はつい書いてみたくなった、ばかにされそうな余談でございました(^^;)。

今回は聖書に見られる「スチュワードシップの精神」と「環境と経済」の関係についての話題です。

 去年の9月にあたふたと地球の反対側のカナダ・ノバスコシア州に出かけました。 時差12時間というタイムラグのなか、奇妙な日本人の集団(28人)が毎日、ヘルメッ トをかぶってバスに乗って、堆肥化工場やタイヤリサイクル工場、最終処分場、ゴミ 分別施設などを見学しました。ビデオやデジカメで撮るのは「ゴミの写真」ばかり。 http://hiroko.s11.xrea.com/x/main/pieces_4.htm

 最近、このハリファックスという辺境のような町も日本からの観光客の多い観光地の ひとつだということを初めて知りました。日本人の女の子が大好きな「赤毛のアン」の プリンス・エドワード島まで車で4時間という場所だから観光コースに入っているよう です。あと世界遺産の町ルナバーグにも車で行けます。

 で、この人口90万人の小さな州が有名になったのはローテク(人手)を使ってゴミ の減量化に成功したからです。必要に迫られて始めたという理由はあるようですが、そ れでも、特別なリサイクル技術を使うわけでもなく、容器包装リサイクル法も自動車リサイクル法もないけれど、ゴミの最終処分量を1989年の760kgから2000年には380kgへ と半減させました。

 乾いた雑巾を絞ると表現される日本(現在の一般ゴミ排出量はひとりあたり約1キ ロ)と比べてまだ排出量は多いかもしれませんが、それでも目標を決めて、ちゃんと達 成するのは大したものです。 

そのためのシステムとして 
@州法に基づいて、デポジット制度などを運営する独立組織「資源回収基金委員会」 を設けた。
A産業界は「スチュワードシップの精神」に基づいて協力した。
Bゴミ処理、リサイクル等の費用をタイヤ・飲料容器のデポジットによる資金(デポジ ットによって利用者に返還する金額は半分だけ)を運用し た(税金を使った方法ではあ りません)。

このカナダの企業一般にみられるという「スチュワードシップ」というのは新旧約聖書 を通じて示されるメッセージで、もともとは「神の恵みに対する応答」を意味するそう です。

★「スチュワードシップは神の造られた人として当然の生き方」 だそうです。

「スチュワードシップ」の元になった「オイコノモス」(1コリント4:1、2)も 「経済」の語源である「オイコノミア」も神の家「オイコス」である世界を神のみ心 に沿って運営することを意味している。

  「経済」という漢字も「経世救民」、世界を天の意志に従って経営し、民を救済する ことを意味している。経済学とは元来神学であり、神学は元来経済学である。 経済とは神のスチュワードシップの事柄である・・・・・・そうです。

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市民や企業のスチュワードシップというのは「労苦を惜しまない奉仕精神、金銭や応 分の負担、リスクを背負う精神」を住民は産業界に求めたものです。 それを具体化した政策が以下です。

@金銭的負担(デポジット)
A奉仕の精神
B「拡大生産者責任の原則」による排出者としての責任

 リサイクル施設への補助金、環境関連事業への助成というのが日本のやり方ですが、 カナダ・ノバスコシア州では環境配慮型企業に対して補助金を出すのではなく、出資 として拠出する、建物の建設固定費等を軽減する、という手法を使っています。 つたない英語で聞き取った内容では、「カナダではいかにも環境にいいことをやって いると自己主張しない。さりげなくやるのがカナダ式」だそうです。 あるリサイクル工場の壁に以下のように書いたポスターが貼られていました。

We have a responsibility to ourselves. to our environment, and to our future.
           Let’s take it seriously.

さりげなく環境にやさしい選択をしたいものです。 そして、それが究極の「経済と環境の両立」につながると思います。

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