経済的インセンティブ
No.20 環境と税金(2) 〜不毛な環境税論争〜 2004・6・30
「環境と税金」についてちょっと書こうかなと思ったのは、日経の経済教室(6月28日、 29日)で「環境税の焦点(上)(下)」という論文が掲載されていたからです。例によ って1本は「環境税(温暖化対策税)を導入すべき」との前提にたった環境税の仕組み についての方法論。
そして、もう1本は「環境税では価格効果が期待できないうえに、日本経済への打撃 になる。地道な省エネを継続すべき」という従来からの経団連の主張に沿ったものです。
「話せばわかる(わからない?)」(でも、最後はどっかで妥協するのでしょうが^^;)、 環境省と経済産業省の立場を代弁しているような不毛の論争に見えます。
炭素税については新聞で取り上げられることも多い。京都議定書の遵守がほぼ不可能 なことが明白になった現在では、環境省を中心に温暖化対策税や排出量取引の導入を 検討中。
対する経済産業省は、産業界の反対の立場を代弁しているのか、導入に慎重 (=別名「反対」、後ろ向き姿勢)です。 この「環境省 vs 経済産業省」の仁義なき戦いに税金の大御所、財務省がからんでく るから話はややこしい。新税を導入しようとすると財務省を巻き込まざるをえないのすが、大御所は環境省が考える「温暖化対策の目的税」には消極的です。議論にの ってくることもあまりないようです。
というのは悪名高き「道路特定財源」など、エネルギー関連の特定財源はすでにいっいある。また新たな目的税を作ると各省間の「新・縄張り争い」が起こるので消極姿 勢ということになるのでしょう。
嘆くだけでは始まらないけど、省益(=自分たちの出世と保身)ばかりに目を奪われ る明治以来の省庁間の縄張りあらそいはなんとかならないものかと、思います。 そのうえ、導入できるかどうか、なんてことは学者さんの興味の対象ではないのですね。
数年前「環境政策学会」で「環境税に関する議論は終わった」なんて話をきいて机上 の議論(空論とはいいません)だけが好きな学者さんも「政策実行面」では当てにな らないな、という印象をもった覚えがあります。
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というように文句と悪口をいうのは簡単ですが、じゃ、実際にはどうしたらいいのかが 問題です。庶民の力をいくら集めてもパワーになりにくい。それでも少しずつながら世
の中は変わっているのだと思います。
環境に関してNPOとか市民が出来るコトって「実際にやってみる」「政策提言をする」 その両面で影響を与えていくことだと思います。
たとえば、数年前には新エネルギーの対象にも入っていなかったバイオマス。 いま森林の荒廃を防ごうということで各地で木質系廃棄物のバイオマス利用が広がって います。政府も「バイオマス、ニッポン」と応援姿勢ですから、バイオマス関連の補助 金枠がけっこういっぱいあります。
資金力に乏しい民間、そしてもっと貧乏かもしれない地方の小さな自治体が協働して 活動をスタートさせる。そして、これらをビジネスとして成り立たせるためには競争相 手の化石燃料の価格の安いことが決定的なネックとなります。
環境分野でベンチャーを立ち上げようとしている人たちにとってはむしろ、炭素税を 導入してもらった方がビジネスチャンスは増える。そうなると経団連のお題目「炭素税 は国際競争力をそぐ。ゆえに、導入はんた〜い」で一枚岩になることもないだろうと思 います。
もっとも「炭素税ではないが、既にエネルギー関連諸税が二重、三重に課税されている。 なかには使途に困っている電源開発促進税などもあって、これ以上の新税は必要なし」 という議論にも一理あります。
関税から始まって石油税、ガソリン税、軽油引取税、電源開発促進税、等。これら税 金の固まりにさらに消費税を課税する「Tax on Tax」となっているのが現状です。 これらの税金の総額は5兆円を超えます。そして特定財源になっているのです。 環境省の案も「当面、エネルギー関連諸税をかえるのは無理なので、現行税制はいじ ることなく、その上に更に炭素税を」という新税構想になっています。
ここまでくると「炭素税を導入してCO2が削減できるかどうか」「省エネが先か、価格 的手段が先か」の議論は「コロンブスが先か、卵が先か」の議論に近い。 とりあえず、思い切って導入してみないことには。
確かに、現在構想されている炭素1トンあたり3400円、ガソリン1リットルあたり2円 の温暖化対策税で、ガソリンの消費が画期的に減るとは思えない。でも発電(どの燃料 源を選択するか?)には影響があると思います。
そのうえ炭素税には「アナウンスメ ント効果」(環境を意識する効果)があるのですから。 容器包装リサイクル法など他の環境関連法規も不完全だけど「○年後に見直すことを 前提に」導入しています。
どうしても「テーコー勢力」に抗しがたいのなら、このような見直しのための留保を つけて導入したらいかがでしょう。