経済的インセンティブ

No.18 再生可能エネルギーの発電量を増やす方法  固定価格買取制度 vs RPS制  2004・6・20

 台風が近づいています。・・ということで、急遽予定をはやめて、刈り取りをして天日干しをし ていた菜の花の種とりをしました(18,19,20日)。去年は「どうしよう、こんなにたくさん!」 ってほどよくとれたのですが、今年は3分の1くらい。新たに買った菜種ではなく、去 年とれた菜種を使ったのが一因、もうひとつの原因は手抜きをしたせいかな?なかなか、 農業は難しいものです。

   

 さて、環境にやさしいエネルギーである再生可能(自然)エネルギーはどうしても化 石燃料より値段が高くなります。それでも地球環境を考えて、再生可能エネルギーを 推進しようとすると何らかの政策措置が必要になります。

  発電施設を増やすという政策のためにはNEDOの太陽光発電補助のような補助金政策 が有効ですが、発電量を増やすとなるともっと効果的な政策が必要になります。

  再生可能エネルギーを推進する政策として議論され、比較されているのがドイツ方式 の固定価格買取制度とデンマークで導入され、日本でも2003年4月に導入されたRP S制度です。

@ドイツ型固定買取制度の説明 http://www.obihiro.ac.jp/~kyouseieco/fixed_price.pdf
A日本型RPS制度の説明  http://www.obihiro.ac.jp/~kyouseieco/rps_jp.pdf
そして、以下が飯田哲也さんの両者についてのコメントです。 http://hotwired.goo.ne.jp/ecowire/tetsunari/040210/03.html

 簡単にいうと@固定買取制度というのは風力やバイオマスなど再生可能エネルギーご とに買取価格を決めておいて、電気事業者は必ず全量を購入することを義務づける制度 です。
  ドイツだと風力に適しているのは北部なので、北部地域の電気事業者と南部地域 の電気事業者との間に負担の差が発生します。
これらの負担の差は小売事業者間で調整を行うことにしています。再生可能エネルギー 発電事業者にしてみれば、発電した全量が必ず買い取ってもらうので安心して発電施設 を建設することができます。

 化石燃料や原子力との価格差を税金で補うとなるとEU法とかに抵触するおそれがあ ります。実際、「プロイセンエレクトラ社訴訟」で特定の産業に対する国家補助の禁止 にあたるとして欧州裁判所で争われた事例があります。

 現在、ドイツが政策として固定買取制度をとっているのは「産業育成」という面を強 調してのことです。再生可能エネルギーに固定価格を設定することによって、生産者余 剰を抑えつつ、技術発展を促す政策にしています。

 一方、日本の経済産業省がこだわるARPS制度( Renewables Portfolio Standard)は電気事 業者に一定量の再生可能エネルギーの保有義務を課す制度です。電気事業者は自ら再生 可能エネルギー発電施設を建設して発電を行うこともできるし、他の電気事業者から買い取ることも出来ます。再生可能エネルギー事業者どうしでの競争が促される制度だと いわれてます。

 かつては固定価格制度をとっていたデンマークは電力自由化にあたって公的負担が大 きくなったこともあって、RPSへと移行しました。これは政権が交代したこと、エネル ギー税が導入されたことなどの影響もあるようです。電力自由化と環境保全が両立しな いわけではありませんが、それなりの工夫が必要という事例です。

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日本では議員立法で何度も提出された固定買取制度ではなく、RPSを織り込んだ「電 気事業者による新エネルギー等の利用に関する特別措置法(RPS法)」を制定し、 去年の4月から施行されたわけですが、果たして再生可能エネルギー発電の促進につ ながったでしょうか?

  なんといってもRPS法による自然エネルギー保有義務量が少なすぎてここ1年で風力 が飛躍的に伸びたなんて話は全然ききません。それよりRPSにこだわりすぎる経済産 業省の失態話ばかり聞くのはどうして???

  個人的には再生可能エネルギー産業だからといって保護産業になる必要はなく、再生 可能エネルギーにも競争原理は必要だ、と思っていますがまだ風力もバイオマスも成熟 していない段階から買取量を決めてしまったり、送電網への不安定感(風力がふえると 系統への安定性が損なわれる、らしい)ばかり強調されている現状は「伸びるべき、 伸ばすべき産業の基礎ができていないうちからの牽制策=RPS法」といわざるをえま せん。

 「個人も大口需要家も含めた電力利用者側で、電力の○パーセントを再生可能エネル ギーにすべし」なんて制度にすると飛躍的に伸びると思いますが、国際競争力にこだわ る大手企業がそのような策を了承するはずはない。

  となると、少なくともある程度自然エネルギー発電が普及するまでは固定買取制度に する、あるいはRPSにこだわるなら義務量をいまの義務量(2010年で1%あまり) の3倍から5倍(それでも10%にすらならない!!)に増やす必要があると思いま すがどうでしょうか。

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