経済的インセンティブ

No.19 環境と税金(1) 〜元祖の租税は自然(神々)に還元するもの〜 2004・6・29

 士業の仕事ってせちがらいことが多いです。要するに純粋理論や理屈でクリアできる 世界ではなく「こういう場合にどう対処するか」という各論の話が多い。そのうえ利害 関係者の調整という面もあるので、交渉力(営業力?)も必要とされる世界です。営業がないから、資格で食っていけるサムライ業をめざした人が多いのに、実際はサービ ス業だったというのは皮肉なものです。

 司法試験を頂点とする国家資格制度を付与されて食っている人たちは「勉強していた 時代と実務はどうしてこんなに違うんだろう」という感慨というか違和感を感じたこ とのある人も多いと思います。

 難しい理論をいっぱい勉強しても実際の「街の仕事」 (大規模なところは仕事の種類が全然ちがうと思いますが)は、理屈としては簡単な ことばかり。でも全ての答えを自分で判断する必要があるなど、別の意味でタイヘン な業種です。

 わたしも転職してサムライ業に入ったので、若いときからこの道一筋、税理士業を天 職として仕事をしてきた人とちがって、年を取って資格を取ったものとしては「税理士 業の日常業務」も「対お役所仕事」も違和感だらけの世界でした。 そのうえ、1995年頃から環境税を始めとする環境問題に興味をもってきたもので、一層 その感を強めていました(税理士業界の異端児(異端おばさん?))。

 昨日、「税理士界」という業界新聞を読んでいてある税理士さんが『環境保全と租税 理念』という原稿を書かれていて、「税理士にも同じような考えの人もいるんだ」とち ょっと感激しました。以下、その税理士さんのお言葉と私が考えていることをまとめま した。

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 いまは、実は、税制も大きなターニングポイントにかかっているのかもしれません。

 一般にはほとんど理解されていないし、専門家の間でも環境税といえば雑税のように 思われていますが、わたしは、税制は全体のシステムとして「環境保全」「持続可能性」と両立できるような体系に変える必要があると考えています。

  税制は「貨幣経済の進展」によって、経済成長のための仕組みのもとで社会システム 維持のために税金が使われてきました。でも、そろそろ転換期にさしかかっている、 ということです。

 初めて知ったことですが、「租税」の「租」とは、元々稲の供え物、また収穫より 抜いてささげるもの、という意味だそうです。思い出すのは日本史で習った「租庸調」 ですが、まほろばの太古(もともとは中国のシステムでしたか?)の不完全は徴税シス テムでは「大事な大事な食べ物からの貢ぎ物」だったろうと思います。

 もっと太古、天照大神の時代(?)は、神々に「生け贄」「人柱」をささげ、それを もって大地や天の豊穣を祈念するものだったそうです。

 「税」の始まりは、自然から獲得した資源を自然(神々)に再分配、還元する機能を 有していたと思われるとのことです。

 ちまたで唱えられている環境税の始まりは100年前、イギリスの厚生経済学者ピグーの 主張した「ピグー税」が最初かと思っていました。ピグーは当時の機関車の火の粉によっ て近隣の森林が焼失していくのをみて「外部不経済を内部化」するピグー税を考察した とのことですが、原初から税金というのは「環境保全税」の色彩があったのですね。

 フランス革命などの市民社会の到来以後はインフラ整備のため、社会の厚生や福祉の ために使われるようになって、「大きな政府」になってしまった。そのうえ、「自然は タダ」という前提で開発ばかり進めていたので地球の自然容量が耐えきれなくなってし まったのがいまの環境問題の根っこでしょう。

 「取りすぎ」「使いすぎ」「出しすぎ」はどっかで歯止めをかける必要があります。

 そういう風に考えると租税制度が果たす役割は大きい。税理士も目先の仕事臭われるば かりではなく、もっと俯瞰的な立場で「環境」と「税」の役割について考えていくべき でしょう。

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