経済的インセンティブ

No.17 地方の法定外税は憲法違反?  2004・6・9

        

 何度か書いてきましたが、いろんな自治体で法定外税が導入されたり、導入が検討さ れたりしています。沖縄県の石油価格調整税、福井・福島・愛媛県などの原発立地県 の核燃料税、茨城県の核燃料税等取扱税、青森県の核燃料等取扱税などはけっこう古 くからある法定外普通税です。

以下、一覧表です。
http://www.soumu.go.jp/czaisei/czaisei_seido/pdf/ichiran06_h16_1500.pdf

 最近はやり(?)なのは、地方分権一括法によって導入が簡単になった法定外目的税 です。かつて法定外普通税の導入には総務相の「許可」が必要であったのが、「同意」 でOKとなった。規定がなかった法定外目的税も「同意」が要件です。

 で、「許可」と「同意」がどのように違うかということを素人的にいうと、「同意は 対等で、許可は上下関係」のイメージになります。

  でも、実際の両者の法的性質の違いはあきらかでないそうですが(実質には両者とも 「協議」が必要で、特別な変化がない)、総務相は法定外税の新設・変更について、 地方自治体から協議の申し出を受けたときは3つの例外を除いて同意しなければなら ない(地方税法261条、671条、733条)そうですから、地方自治体も新税を検討しやす くなったのは間違いありません。

 で、地方分権一括法によってどのような新税が導入されたかというと、三重県を最初 に10県あまりで導入された産業廃棄物税、東京都の宿泊税、豊島区の放置自転車税、 高知県の森林環境税、そして、一審と二審で否定された東京都の銀行税などです。

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どんな税金であれ新税導入に「あつれき」はつきものです。それでも新税を導入しよ うとする自治体は、税の基本である「広く薄く」課税する税(=多くの住民から反対 される可能性がある)より特定の企業のみを対象とする税の導入に傾きがちです。

 具体的にいうと高知県の森林環境税のように住民税の超過課税のような「みんなが広 く薄く負担する」新税が望ましく、東京都の銀行税や特定の業者をねらい打ちにする税 は憲法上の疑義があるということになります。

 産業廃棄物税は廃棄物の最終排出者が負担することになります。価格に転嫁できると いいますが、そして、最終処分場の逼迫を防ぐためという(環境にやさしい?)導入目 的をもっていますが、それでも、特定企業にのみ負担を求める税はオカシイというこ とになります。

 特に電力会社にだけ負担を求める柿燃料税のようなものは憲法上も問題があるようです。

  結局、とん挫してしまったけどここ1年ほど香川県でも産業廃棄物税と水環境保全税 の導入を検討してきました。 http://www.pref.kagawa.jp/zeimu/sinzei2/

 産業廃棄物税は特定企業を狙いうちというわけではありませんが、実際は特定の企 業の負担が大きい税です。導入に反対する業者の数は知れてます(そのうえ、これ らの企業の人は委員としてではなく参考意見を述べる機会が与えられただけでした)。

  ところが水環境保全税は住民税にくっつけて払う(=住民税を払う全員が増税にな る)ので、検討会などでも反対意見が多かった。結局、議会の反対意見が強くて (とりあえず)導入は見合わせという形になっています。

 このような事情があるので直接の負担者となる業者の少ない産廃税ばかり新税と して導入するとなると、憲法違反といえるかどうかまでは不明ですが、問題ありと いえそうです。

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