経済的インセンティブ

No.16 いつ実現?環境新税 2004・3・19

 私は愛媛県の出身で、いま住んでいるのは香川県です。高知と高松の違いが分からない人にとっては「香川県と愛媛県の違い」なんて目くそ鼻くその世界でしょうが、地元民にとってはけっこう違うのです(^。^) 香川県は「全国に先駆けて」ということは絶対しないところの ようではありますが、他の自治体が始めたことはビリにならない程度にはついていき たい県民性のところのようです。

  2000年の地方分権一括法の施行以来、森林や水資源などの環境保護を目的に新税をつ くる動きがあります。税収不足を補うため自主税源を得るのが目的のひとつ、もうひ とつの目的は環境対策の費用を得るための、そして、環境負荷を減らすためのインセ ンティブ(奨励策)が目的です。

  前者の立場を重視すると「税源が足りないからといって安易に新税を創設すべきでな い」ということになります。後者の立場を重視すると環境を守るための費用はみんな が負担すべき(ただし、税による負担かどうかは議論があるところです)。

  香川県では「水環境保全税(仮称)」「産業廃棄物税(仮称)」の2つの新税の導 入をめざして、先日(3月17日)県議会の総務・環境建設両委員会の合同集中審議が開かれました。

  県の事務方は新税試案を作成し、意見を求めたそうですが、新税の試案の内容に対す る議論にはとうていたどり着けず、「行財政改革が先だ」「12月の合同委員会で導 入反対の議員が多数だった。それなのに試案をつくったのはおかしい」と不満の声が 相次いだそうです。 夕方のテレビで少し放映されましたが、「マイクの前でいきりたつ議員さん」「うん ざりした様子で聞き入る県側の部長さんたち」をみると確かに押されっぱなしで抗弁 できずという図式だったのでしょう。

  議員さんたちの議論「試案の内容よりも、導入の是非についての審議が先」というの も当然といえば当然です。確かに地方分権は大事なので自主財源を得ることは重要です。でも、「行き詰まれば増税」というのはあまりに安易です。

 でも、「環境を守るための費用は環境に負荷を与えた人が負担すべき、それは商品の 価格を通じて消費者が負担すべき」という考えも環境保全へのひとつのアプローチです。そもそも、環境税というのは将来世代のために、環境に負荷を与える全ての排出事業者が責任を負うべきという考えに基づいているのですから、「財源不足を補うために環境税を」というのは本末転倒です。本来のピグー税としての考えとは相容れない考えです。

  もし産廃税のような地方環境税を導入したとしても、これらの税源の使い方が従来型の補助金支給や施設拡充費というだけでは効果 は薄い。そのうえ、地方自治体レベルの環境新税では税収は数億円程度ですからイン センティブとしても効果はもっと薄い。 なかなか、難しい問題です。でも、国レベルであれ、地方レベルであれ、身近な環境 問題と税金問題を考えるきっかけにはなると思います。ゆっくり、あせらず、議論を 進めていくべきでしょう。

                

                           <春満開の花の下、満員の花見客>

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