経済的インセンティブ
No.15 まずやってみる 〜イギリスの気候変動税・排出権取引、ドイツのデポジット制〜 2004・2・27
日本は意思決定が遅い。政策面で世界に先駆けて新しいことを率先してやることは (絶対に)ない、と思います。 政府・官房長官の答弁なども「欧米の様子をみながら・・(先進数カ国決断した後 で、ビリにはならないように)判断をしたい」という意味のことを別の言い方をして いるだけのようです。
地球温暖化問題を解決する(目的)ための(手段)としての経済的手法は理論は、ほ ぼ出尽くしているのですから、何とか政策として実行してみることが大事だと思いま すが、相変わらず日本が率先してやることはありません。
地球温暖化防止のための経済的手法というのはよく議論される「環境税(炭素税)」 や「デポジット制」だけでなく、旧来型の補助金や租税的手段(税の減免など)も含 まれます。
たとえば今話題になっている産廃税は一種の環境税です。でも、産廃税の税収は目的税にせざるをえないこともあって、別会計(「基金」にする)にして、環境防止型技 術や産業への補助金に充てるケースが多く、新しい発想にはほど遠い状態です。
脱焼却を目指す必要があるのに、実際にはダイオキシン問題とからんで炉を大型化 し、交付税や補助金づけにしている。ムダな税金が使われるうえに、「ゴミが足りな い」事態になりかねません。
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日本では既得権にがんじがらめになって行財政改革がちっとも進まないのが現状です が、EU諸国は「まず、やってみる」「だめだったら変える」という基本的な姿勢が
あるのが素晴らしいと思います。 実際に可能かどうか分からないけど、スウェーデン、ドイツ、デンマーク等は「脱原 発」を宣言しています。
イギリスは早々と気候変動税を導入したうえに、排出権取引 も始めました。
ドイツは「重いガラス瓶使用」と「環境保全」を両天秤にかけて、不便だ けど環境に優しいデポジットを導入しました。
多くの人が指摘するようにイギリスの温暖化防止のための政策は完全なものではあり ません。アメとムチを組み合わせた政策で京都議定書のEUの削減目標90年比8% 減(イギリスは12.5%減)を99年時点で達成。これはCO2排出量の多い石炭から天 然ガスへの転換があるので「乾いたゾウキンを絞る」状態の日本と事情がちがいます が、それでもすごい!!
今度は京都議定書公約を逆手にとって2050年までに60%削減という壮大な目標をか かげ、CO2削減をビジネスにつなげようとしています。「いろんな政策を試して、最 も適したものを見つければいい」というアプローチは賞賛に値します。
気候変動税というのは企業向けのエネルギー消費税です。電気や石炭などに消費量に 応じて課税されます。ただし、新税導入と同時に「気候変動協定」という減免措置を 導入しました。省エネや温室効果ガスの削減目標を決め、政府と協定を結んだ企業や 団体に8割の減免を認めます。
「たくさん使って税金を払うのがいいですか、省エネ して税金を安くしてもらう方がいいですか?」というアメとムチの政策です。 そのうえ、協定に参加して、削減目標を上回った場合は超過分を「排出権」として市 場に売ることができるのですから省エネが利益を生むことになります。
これらの制度 によって2年間に5000社が気候変動協定に参加、CO2換算で1350万トン(90年の全 排出量の2%)の排出をおさえることができました。 電力自由化を世界に先駆けて始めたのもイギリス。伝統にしばられていそうな国の割 には新しいモノ好きな国のようです。
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一方のドイツ。環境大国ドイツといえども、重いビンの使用料が減り続けたため、 2003年1月に強制デポジットを制度化、10月に本格導入しました。リターナブル容器
は8ユーロセント、ワンウェイの使い捨て容器(缶、プラスチックボトル、再利用で きないガラス瓶など)は25ユーロセントと約3倍のデポジット料金をかけて、リター
ナブル容器の利用を増やす狙いをもった制度です。
デポジット制度を運用するためには預かり金を払い戻す統一システムの整備が必要で すが、整備される見通しがたっていません。その結果、業者や小売店が缶ビールなど を取り扱わなくなった。缶減らしになっている。
といいのか悪いのかデポジットの機能不全が環境にやさしい結果になっています。 こんなふうに手間がかかり、問題点もかかえる使い捨て容器のデポジットも国民の 75%が支持しているそうです。
日本で同じような調査をしたらどうでしょうか?総論ではほぼ全員が賛成でしょう。
各論での賛成者を増やすためには、
@デポジットの金額を「返却しないともったいない」と思えるレベルまで高くすること(最低30〜50円は必要)、
A回収ポイントを増やすこと、
Bデポジットのうちから分別回収システム運用費用をまかなうこと、
C全国レベルで導入すること、
が必要だと思いますがどうでしょうか?