豊島事件と産廃問題

 

No.13 廃棄物の定義 2002/10/8 

 廃棄物=ゴミ? 「廃棄物」というのもやっかいなもので、廃棄物処理法上の定義では「ごみ、粗大ごみ、燃え殻、汚泥、ふん尿、廃油、廃酸、廃アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形状又は液状のもの」です。気体状のものは廃棄物に含まれません。

 現在の廃棄物処理法では、廃棄物に該当するか否かの基準は有価か無価か−です。簡単にいうと無価のものが廃棄物、有価のものはリユースの対象。廃棄物になるかどうかの基準はお金になるかどうかです。無価でもリサイクルされるもの(家電リサイクル法の対象4品など)も廃棄物処理法の対象です。境界線をどう線引きするかはなかなか難しい。

 いま、廃棄物の定義の見直しがされているところです。 詳細は中央環境審議会「廃棄物・リサイクル制度の基本問題に関する中間とりまとめ」(平成14年3月22日)http://www.env.go.jp/council/toshin/t03-h1311/t03-h1311.pdf にあります。その概要版はhttp://www.env.go.jp/council/toshin/t03-h1311/t03-h1311-1.pdf です。

 この中央環境審議会の「廃棄物・リサイクル制度に関する中間とりまとめ」では、廃棄物の定義を広げて、リサイクル可能なものまで廃棄物処理法の規制を広げる方針を打ち出しています。 現在の廃棄物処理法は@焼却・埋め立て処分されるものとA廃棄物であるがリサイクルされているもの、これらの無価物を対象としています。有価のリサイクル可能物は規制対象外です。ところが、上記のとりまとめでは、古紙や貴金属、古着・中古自動車などのリサイクル可能物を含めて廃棄物と定義する方向で考えるべきとしています。

 その理由としてリサイクルを名目としながら、不適正処理となった豊島の不法投棄事件をあげています。

 豊島事件までの国の廃棄物の解釈は「客観的に汚物又は不要物として観念できる物であって占有者の意思の有無によって廃棄物となり又は有用物となるものではない」という客観説で、昭和52年まで採られていました。

  現在は、「廃棄物とは、占有者が自ら使用し、又は他人に有償で売却できなくなったために不要になったものをいい、これらに該当するか否かは、その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者の意思等を総合的に勘案して判断する」という総合判断が採られています。 「おからは産業廃棄物に該当する」と判示した最高裁判例(平成11年3月10日)でも総合判断説が採られています。

  環境省が見直しを検討しているのは、「占有者の意思」「取引価値の有無」というあいまいな事項が判断の基準として用いられると、行政の担当や市況によって廃棄物か否かの判断が分かれるためです。 古紙の取引をみればわかるようにグッズになるかバッズになるかの境界は微妙です。

これに対し日本経団連の意見書「循環型社会の着実な進展に向けて」(2002年7月16日)http://www.keidanren.or.jp/japanese/policy/2002/044/shiryou1.html では、無価物でもリユース・リサイクル可能物は各種リサイクル法を拡充し、廃棄物処理法の規制対象外とするように、廃棄物の定義を縮小すべきと主張しています。

  循環型社会推進のための政策体系は循環型社会形成推進基本法のもと、廃棄物処理法資源有効利用推進法の2本立てになっています。 廃棄物処理法では不要物と表記されているものが、循環型社会形成推進基本法では不用物と表記されています。苦肉の用語使いでしょう。たぶん、不用物≧不要物を意味しているのでしょう。

  廃棄物処理法というのはリサイクルできない最後の最後の埋め立て・焼却ゴミについての規制法だと思いますので、対象はできるだけ狭く(焼却・埋め立て処分するものだけ)して、リサイクル可能品は事業者責任としてメーカーにリサイクルの責任を負わせるべき、とも考えられます。

 一方、有価のリサイクル可能物と有価のリサイクル・リユース可能物の境界は曖昧なので両方ともを廃棄物として扱った方がいいかなと思っいます。どうでしょうか??

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