豊島事件と産廃問題

No.14 香川県県外産廃取扱条例 2002・10・17

 2年前に香川県と豊島住民との間で公害調停の最終合意が結ばれました。真っ黒な汚水が海にしみ出ていた現場北海岸はいま鋼矢板の遮水壁が作られ、廃棄物の山である現場一帯は銀色の遮水シートで覆われています。

   これらは来年夏には隣りの直島に運ばれて表面溶鉱炉2基で焼却・溶融処理されることになっています。この2基の溶融炉は三菱マテリアルの敷地内に200億円以上の税金を使って県の施設として建設されています。 豊島に放置された66万トンの廃棄物の処理に10年、建設費とは別に200億円〜300億円のランニングコストがかかるといわれています。

 なぜ直島が豊島の産廃処理を引き受けたかというと、銅の精錬所は先細りで島の将来のために新たな事業がほしかった、というのも大きな要因だと思います。

 豊島事件が発覚した1991年、香川県は県外廃棄物の持ち込み原則禁止を要綱の中に明文化していました。ところが三菱マテリアルでは一日5000トンの廃棄物を処理する炉を建設するため、つまち、一日5000トンのゴミが必要なため、県内のゴミだけでは足りないという事態が生じました。

  三菱マテリアルは豊島の処理用の溶融炉とは別に50億円かけてリサイクル事業を行う予定です。県はそれを支持し、再資源化する産業を育成すること約束をしています。直島エコタウン計画といいます。エコタウン計画に対する国の補助を得たいがために急いで県外産廃取扱条例作りをしたという経緯があります。

 一民間企業支援策といっても過言ではない理由によって、香川県議会は2001年12月17日に賛成40人、反対3人の圧倒的多数で県外産業廃棄物の取扱いに関する条例を可決しました。前文に「県外廃棄物の搬入を原則として認めない」と書かれてはいますが、「リサイクル目的に限りOK」という第3条がメインになっています。

 「リサイクル目的の廃棄物」を廃棄物に含めるかどうか現在、廃棄物処理法改正議論の中でも取り上げられている点です。

(事業者の責務)  第3条 県外産業廃棄物を県内で処理しようとする事業者は、県が実施する産業廃棄物に関する施策に協力するとともに、その処理に関して県民の理解を得るようにつとめなければならない。

 産廃リサイクルは新たな産業ではありますが、成長産業になっては困るものです。成長するためには処理対象となるゴミが必要ですが、発生抑制を押し進めるとゴミは減少するのですから。

 リサイクル産業が成長産業であるためには、大量生産・大量消費・大量廃棄の社会がずっと続かなければならないという矛盾をかかえることになります。

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