豊島事件と産廃問題

No.21 第15回・豊島原論 「環境問題とわたしたちのライフスタイル」 2003・1・11

<グローバリゼーションの中でのハーモニゼーションとは?>

 第15回豊島原論として、京都大学環境保全センターの高月紘先生による講演を開催しました。「環境問題とわたしたちのライフスタイル」というのがテーマです。高月先生は「HIGH MOON」というペンネームで環境問題を表現した漫画を書かれているプロ(ただし、本人曰く、食っていけないそうです)の漫画家の方でもあります。

↑このパワーポイントの絵のように、環境問題の現状を簡潔な漫画で表されています。

@現代の環境問題と廃棄物問題
A今、ゴミの中身は?
Bライフスタイルと環境負荷
C持続可能な社会へ向けて

 という内容で豊富な資料と統計、そして、わかりやすい漫画による説明をしてもらいました。環境保全センターでは定点観測として京都のある住宅地のゴミの中身を調べているそうです。そして、その量や中身の変遷を調べられているそうです。大学のセンセーもきれいなスーツを着てつとまる商売じゃないんですね^^;)。

 ゴミ袋のなかの、ひからびた食品の廃棄物の詳細を仕分けていくのはさぞ大変だろうと思いますが、「私くらい慣れてくると、冷蔵庫からそのまま捨てられたものか、料理中に出た食材か、食べ残しの廃棄物か、区分できるようになる」とのことでした。

 日本では食糧供給のうち30%は過剰で、649kcal分(1日につき)は捨てられているそうです。食糧自給率42%(1996年)という悲惨な状態にも関わらず・・・です。外国から輸入した食糧のうち30%を捨てている。その外国も食糧があまっているから日本に輸出しているわけではなく、あいかわらず飢餓の状態にある人は多く、南北問題は解消どころか格差が広がって行くばかりです。

 残飯による食生活の損失は11.1兆円でこれは、農水産業の総生産12.4兆円とほぼ同じです。つまり、国内のお百姓さんや漁師さん全員が作ったり、捕ったりしてきたモノ全てを捨てていることになります。びっくりしました。

 我が身を振り返っても、確かに賞味期限きれで冷蔵庫からそのままゴミ袋に入れる食品も多いのですが、そのトータルが年間700万トンにも及んでいるなんて!アフガニスタンその他多くの飢餓に苦しんでいる子供たちが聞いたら「嘆きの壁」になりそうな現状です。

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 で、どのようにして、このような不遜な現状から持続可能な生活へと変えるべきか、についてですが、やはり、リサイクルだけでは環境容量をオーバーすることになる、とのことでした。

 今後、人口は70兆人になると見込まれています。70兆人の人が今の資源エネルギーを使い続けることは不可能です。日本で資源・エネルギーの量を世界の平均にしようとすると、現在の半分以上減らす必要があります。

 リサイクルだけでは環境負荷は17%しか減りません。必要なものだけで生活していくエコライフ・シンプルライフを実践して初めて、環境負荷の少ない社会を築くことができます。地産・地消、スローフード、エコマネーを重視し、有限の資源エネルギーを循環して使う(これらは手段です)、農業を中心とした地域循環共生社会をめざす必要があります。

 おとうさん、おかあさん、私たちにも残しておいてという印象的な漫画を見せてもらいました。罪深いおじいさん、おばあさんの世代になりそうです^^;)。

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 と、環境関係のシンポでは最後はこのような結論になるので、「うん、私もこれからはマイバックを持って買い物に行こう、PETボトルはなるべく使うまい」と会場を出るときはいつも堅く決心します。

 でも、世の中のメジャーな心配事は構造不況。「なるべく買わないことにして、必要なものだけで生活していくのでは沈みかかっている日本経済は一層悪くなるではないか」というのが多くの人の考えだろうと思います。

 町の角っこにあるマクドナルドだって多国籍企業、いま使っている手袋だって中国かどこかで作られたモノ。どんな田舎に住んでいたって、いやおうなしにグローバリゼーションの潮の中に放り込まれています。  グローバリゼーションというのは、世界基準ではなくて、アメリカ基準です。アメリカが独り勝ちになっているため、「戦争か平和か」という政治面だけではなく、環境面でもとても危険な状況にあると思います。

 経済はグローバル化しています。ボーダーレスです。そのなかで、これからの日本経済は質的に変わっていくのだろうと思います。環境重視の視点と経済性とを組み合わせた選択肢はいくらでも採れます。このような経済の質の転換のなかで、資源小国日本も他の国々と協調しながら(カタカナ英語でいうと経済のハーモニゼーションです)、付加価値を作り出していくべきなんだろうと思います。

 

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