豊島事件と産廃問題

No.24 読書感想文〜産廃コネクション〜 2003・3・9

千葉県庁の産廃Gメン・石渡正佳さんが書かれた「産廃コネクション」(WAVE出版)を読みました。

千葉県の不法投棄の現状(不法投棄シンジケート、ブラックマネー等「産廃コネクション」の実像)の分析、産廃処理システムの迷走の指摘、産廃戦争を終わらせるための提言等がその内容です。

<表紙の裏にかいてある説明文は以下です。> 今、この国では、悪夢のような現実が進行している。国内最悪とも言われる豊島の不法投棄問題。自社物と有価物の偽装工作を組み合わせて不法投棄された、シュレッダーダストによる深刻な汚染が、海洋まで拡大した悲惨な事例だ。 ただ、同じシュレッダーダストが、全国各地の自社処分場に何百倍も、何千倍も埋蔵され、じわじわと周辺環境を蝕んでいる。 不法投棄は複雑なトリックが織りなす構造犯罪であり、事件として発覚するのは氷山の一角にすぎない。

実際に不法投棄されている産廃の量は不明ですが、公式統計では年間40万トン。産廃の総排出量は年間4億トンですから、0.1%にすぎません。 1日あたり1000トン、10トンダンプで100台分。この公式統計による不法投棄のなかで千葉県は日本一、産廃不法投棄銀座となっています。

 発覚していませんが、実際の不法投棄は4000万トンだろうといわれています。現実に不法投棄は後をたたない。その原因として産廃の最終処分場不足が構造的な問題としてあげられています。 廃棄物処理法の厳格化や住民の反対等もあって最終処分場は作りにくくなっています。受入の残余年数はあと1年とか2年とか数年前からいわれながら、まだ不足という事態に陥っていないのも不法投棄のおかげ(?)かもしれません。

 でも、最終処分場を増やしたから産廃問題が解決するわけではありません。石渡氏は最終処分場を増やすのではなく、中間処理施設を増やすことによって、最終処分と不法投棄を同時に減らすことを提言しています。

 リサイクルにも虚実があって各種リサイクル法も有効に機能しているとはいいがたい。でも、増える廃棄物を処分するというスタンスではなく、発生を抑制する、可能な限りリサイクルするという循環型のシステムに変えない限り、産廃不法投棄のいたちごっこは終わりそうもありません。

 いま、廃棄物処理法の改正案が国会で審議されています。 以下、河野太郎衆議院議員のめるまが(3月5日号)からの転載です。

国の査察権が明記されるが、査察発動の要件はきちんと規定されるのか?環境省は答えられず、望月政務官が引き取る。 さらに、廃棄物の定義、解釈の問題、廃棄物行政に関する規制が事実上、複雑怪奇、現実離れしていて守られないルールになってしまっていること、その結果裁量行政がまかり通っていること、一般廃棄物に関わる数々の問題点に関して今度の法改正が何もふれていないこと等々を問題提起し、部会で引き取ることにしていただく。

  ・・というように、廃棄物処理法による規制をいくら厳しくしても実務では裁量の余地が残るし、根本的な矛盾(産廃と一廃の区分、廃棄物の定義、有価物に対する取扱等)は次回の改正でも改訂されないようです。

  思うに、廃棄物問題のように加害者も被害者も多数にわたる場合は、従来型の規制的な方法、規制ばかり厳しくするやり方では解決できないと思います。

 「こんな不況な時代に、環境にコストをかけていられない」との否定的な意見もありますが、そのような企業はやがては淘汰される。リサイクルに市場原理を取り入れたシステム(同時に、市場の欠陥も同時に補うシステム)が必要との感を強くさせられえた一冊でした。

 

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