豊島事件と産廃問題

No.25 産廃税導入はごみの削減を促すか 2003・4・20

  産廃税という税金は、産廃を最終処分場に埋立処理する事業所に対して賦課する法定外地方税のことです。去年、三重県が初めて導入しました。地方税ですから当然、県によって課税されたりされなかったりします。

  三重県内で埋立処理すると1トンあたり1000円課税されます。この1000円をケチって、隣の奈良県の処分場に捨てようということになると、課税目的が果たせないことになってしまうので、ある程度の広域で導入する必要があります。

 余談ですが、産廃税も効果が上がれば上がるほど税収が少なくなる(ごみを削減するのが目的なので、目的が達成されると税収は少なくなります)という、税金本来の目的(国の経費をまかなうための財源とする)とはかけ離れた種類の税金です。環境税はこのような点で従来の税金からみると異質なものです。

 岡山・広島・鳥取の中国3県はこの4月に導入しました。岩手・秋田・青森の東北3県も04年に導入予定、奈良県と滋賀県も04年度からの導入を決定しています。

  今はどこの自治体も財政難ですから、新たな財源として産廃税を検討しているようです。「税」という名前はついていますが、実質は負担金のようなものです。一種の負担金ですからどこが負担するかが重要になります。

  廃棄物処理法では、ごみは排出企業に処理を義務づけています。この理屈に従って排出企業に課税する方法だと、排出企業の多い都市部を抱える自治体(東京や大阪など)が潤うことになります。

  でも、実際の最終処分場は地価の安い僻地や山間部に作られることが多い。処分場から有害物質が流れ出した場合、被害を受けるのは周辺の住民です。不法投棄が発覚し、処理業者に撤去する資力がなかった場合、原状回復の費用は処分場のある自治体の負担となります。そう考えると産廃税は最終処分場のある自治体に課税権があると考える方が適切に思えます。どちらの考え方に基づいて課税すべきか議論の余地のあるところです。

  ところで、産廃税が課されると本当にごみの減量効果はあるのでしょうか?既に導入している三重県の例では98年に70万トンだったごみ埋立量は、01年度に28万トン、02年度は20〜25万トンまで減る見込みだそうです。 最終処分場の不足問題は地域の環境問題(NIMBY問題やグリーン購入、製品をリサイクル可能なものに変えていく企業の責任などなど)から、廃棄物発電やバイオマス発電の促進などにからんだ地球環境問題まで広範囲に影響を与えます。

  どんなにリサイクルをすすめても、どんなにリデュースをすすめても、どうしても最終的な廃棄物の発生を抑制することはできません。どこかに最終処分場を作る必要があります。

  それでも最終処分に回すゴミの量を少なくするようなあらゆる方法を考えないと、産廃問題はケリがつきません。産廃税のような経済的手法もそのための一助になるはずです。

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