豊島事件と産廃問題

No.26 産廃事業者と財務諸表 2003・5・8

 No24で紹介した産廃コネクションを書かれた千葉県の産廃Gメンの石渡正佳氏が「決算書とマニフェストを照合すれば、見えない廃棄物の流れを把握できる」と財務諸表の読み方を紹介しています。

 安いからと頼んだ処理業者が実は不法投棄(ウラ道の処理業者に頼む)をして安くしていた場合、依頼した排出者側も責任を問われます。契約をするときは決算書を提出してもらってチェックをすべきだそうです。決算書が読める人はご参考に。読めない人もご参考に。大丈夫、チェック項目は簡単です。

 まず、マニフェスト(産業廃棄物管理票)というのは、産業廃棄物の処理の流れを把握するための管理票(紙のマニュフェストは数枚綴りです)のことです。平成12年の廃棄物処理法の改正によって導入され、平成13年4月に排出事業者の確認範囲が最終処分までに拡大されました。産業廃棄物の名称・数量・委託先等が記載されています。いまは電子化されているようですが、排出者から委託先、最終処分まで流れを把握するための制度です。詳細は以下のサイトで。 http://www.jwnet.or.jp/jwnet/seido_gaiyou.html  

 企業から出される産廃は正規ルートでは、一次収集運搬→中間処理施設(焼却・破砕等)→二次収集運搬→最終処分場(安定型・管理型)と流れていきます。

 最初に、中間処理業者の決算書の読み方について。
  決算時点で処理施設に受け入れながら、未処理の廃棄物があるはずです。これは未処理廃棄物の未払い処理費用という貸借対照表(バランスシート)の負債項目に上がっているはずです。中間処理業者の経営状態を判断するには、この経費を引いた利益を目安にするそうです。産廃の処理費用には目安がある(建設系廃棄物なら1立法メートルあたり2万円)ので、たい積量の推定値をかけると処理費用が安いか高いかが判断できます。

 損益計算書からも判断できます。チェックポイントは@産廃処理事業の売上高、A売上原価のなかの外注費、B売上高と外注費の比率 の3つです。

 @売上高の項目では、委託契約時の処理単価で割ると実際の受注量を推定できます。
 A外注費は、最終処分を委託する費用だと考えられるので最終処分率がわかります。この最終処分率も中間処理の内容によって目安があるそうです。中間処理業者では受注量と最終処分率の指標から不法投棄のリスクが高い業者を割り出せるそうです。

 次は最終処分業者の財務諸表の読み方について。 最終処分場への埋立処理をする最終処理業者は処分場をもっています。でも、いつかは満杯になって埋立が完了します。収益があげられなくなりますが、満杯になった後も30年間は管理が必要です(原発のバックエンド費用みたいです)。

 そのための維持管理積立金が計上されているはずです。管理型処分場では積立金は経費として認められています。安定型処分場では積立金は義務づけられていないそうですが、それでも、積み立てておく方が望ましいので、積立金の有無とその積立額の多寡が業者を判断するひとつの目安にになります。

 会計の門外漢にとっては「財務諸表を読む」ってすごく難しそうですが、要は家計簿のようなものです。素人でも大体のことは分かります。財務諸表から不法投棄をつきとめるとは産廃Gメンも大したものです。

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