豊島事件と産廃問題

No.28 ガス化溶融はゴミ問題の救世主か?  2003・6・11

 従来型の焼却炉はゴミを階段状で炉内を転がしながら燃やすストーカー炉と呼ばれる炉が主流でした。それが現在ではガス化溶融炉の受注の方が多くなっています。

  その原因は2002年12月にダイオキシン類濃度の排出基準が強化されたからです。これまでの800℃程度の焼却炉ではダイオキシン対策ができない。ということで、2003年3月末には全国16の自治体にガス化溶融炉が一斉納入されました。ガス化溶融炉は高温でダイオキシン類を分解するため、排気中のダイオキシンが極めて少ないのです。

  受注を受けるメーカーは●●重工業梶A★★造船鰍ニいうような、かつての日本経済を支えた重厚長大型産業です。鉄鋼業は「鉄冷え」で斜陽産業になりつつあります。造船業も人件費の高騰のせいか諸外国に仕事を奪われているようです。このようなメーカーがもともと持っていた技術を使って、ガス化溶融炉市場を新たなターゲットにし、熾烈なシェア争いと技術開拓をしているというのが現状のようです。

 それではガス化溶融炉は「ゴミ問題の救世主」になるような手放しに素晴らしいものでしょうか?ガス化溶融炉では、まず投入された廃棄物を300℃〜500℃の中温で、無酸素状態で蒸し焼きしてガス化します。次に、そのガスを燃やして、残った不燃成分を約1400℃で溶融します。最初の分解炉では有価金属等が残り、溶融炉では溶融スラグが残ります。 この溶融スラグは路盤材やセメントに混ぜる砂の代替として利用します(価格的にはペイしません。逆有償でない程度の取引価格です)。高温のためダイオキシンの発生が極めて少なく、排熱を利用して蒸気タービンを回して発電もできます。このように、埋立処分にまわる廃棄物がほとんど発生しませんし、熱利用も可能というメリットがあります。

 これらがすべてうまくいくと素晴らしい。自治体が頭を悩ませているダイオキシン対策と最終処分場不足問題を一挙に解決できます。でも、ガス化溶融炉は値段が高いく、小さな自治体では対応しきれないので広域処理ということになります。要するに、ある程度の分量のゴミがなければ回っていかないことになります。ゴミの発生が前提の制度なので発生抑制(リデュース)が進み、ゴミの量が減ると対応しきれなくなって休止中ということになってしまいます。

 ★産廃分野でもガス化溶融炉は期待されています。1994年の廃棄物処理法の改正で廃自動車のシュレッダーダストは「安定型」から料金の高い「管理型」での処分に変更されました。管理型処分場での埋立処理より安い方法としてガス化溶融炉で一挙に処理してしまうことに期待が集まっています。でも、産廃は長く野ざらしになっていたり、雑多な廃棄物が混じっていることもあって「実際に処理をしてみないとわからない」経験工学の段階です(まもなく、直島で豊島産廃の処理が始まります。既に始まった試運転では思いの外水分や土が多いなど処理をして初めて直面する問題も多々あるようです)。

   シュレッダーダストをガス化溶融炉で処理すると金属が回収できます。排熱を利用し、自家発電も可能です。残りは溶融スラグになり、飛灰は埋立処理に回します。廃自動車は既に75%は金属回収されています。排熱回収16%をリサイクルに含めるとトータルリサイクル率は90%以上になります。ここでもサーマルリサイクルを推進すべきかという問題に突き当たります。

 むやみにマテリアルリサイクルを推進しても販路がないなど岐路に立っている面があります。マテリアルリサイクルをするにもエネルギーが必要なので、トータルのエネルギー投入量という面からはあまり効果的な方法ではありません。しかし、「マテリアルリサイクルできないので燃やしてしまえ」というのでは循環型社会になりません。廃自動車や廃家電などの製品をリユースが容易にできるような製品へと変えていく必要があります。  

 3Rではなく、2R(リデュース・リユース)へ変える必要があるのであって、リデュースの観点が皆無のガス化溶融の推進は慎重に進める必要があります。

<< 前へ ====次へ>>

「豊島事件と産廃問題」の目次へ戻る