豊島事件と産廃問題

No.29 その後の豊島事件 〜産廃処理がスタート でも、遅れそう〜 2003・7・26

  2000年6月に香川県と豊島住民との間で公害調停の最終合意が成立しました。香川県は廃棄物認定を誤り、処理業者への指導監督を誤った責任を認め、豊島の産廃処理を行うことになりました。

  あれから3年がすぎました。50万トンに及ぶ不法投棄現場の様子は様変わりしています。現場は一面、ゴアテックスのシートで覆われ、産廃処理をするための巨大工場群(水処理施設など)ができています。産廃を隣の直島に運び出すための廃棄物専用船「太陽」接岸岸壁も建設され、産廃運搬用のコンテナトラックや工事車両が出入りし、数年前の荒涼とした不法投棄現場とは隔世の感があります。大規模工事現場みたいです。

  予定では、この8月から豊島の隣の直島にある三菱マテリアル兜~地内に建設された中間処理施設・表面溶融炉2基(日量200トン)を今年の夏から稼働させることになっていました。年間300日稼働させて6万トン処理、10年で処理を終わる予定になっています。

 2002年度予算では施設整備などに約100億円、2003年度予算で22億円、今後10年間処理費用だけで毎年27億円以上、総費用は490億円が見込まれています。

 ただし、現場作業員の安全面の対応の遅れから、処理開始時期は遅れる見込みです。なにしろ、どんな産廃が混じっているかわからない産廃現場を掘り返し、豊島での前処理をしている作業員はマスク1枚着用しているわけではありません。健康管理や作業マニュアルといったソフト面の対策がとられているわけでもありません。現場見学をするたびに作業員の健康面の管理はこれでいいのだろうか、と疑問に思っていました。

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 工程が複雑なので、正確かどうかわかりませんが、、、、

 @現場の産廃を重機で掘り出す
→Aトラックで現場に建設された前処理施設に運ぶ
→B直島に運ぶ前に前処理をする(産廃に含まれる汚れた水分を浄化するための水処理施設もある)
→C産廃運用船で直島に運ぶ(毎日2往復、年間200日)
→Dロータリーキルン炉(前処理の必要なものの熱分解処理)
→E直接溶融炉で処理。

  1.  ここまでの工程を経て産廃を無害化します。廃棄物を溶融して最終的に出てくるスラグは路盤材として土木工事に利用する。飛灰などの重金属類(銅や鉄)は三菱マテリアル直島製錬所で活用する。発生する熱も蒸気で回収し、製錬所で自家発電に生かす。

 マテリアルリサイクルとサーマルリサイクルの両方が可能で、全国で15番目のエコタウン事業の指定を受けることができた、というところです。 が、実際は「廃棄物」の層の中身も厚さもまちまち。実際のところは掘ってみなければわからない。

 マテリアルリサイクルとうたっているスラグの利用も経済的には当然ペイしません。路盤材として使って本当に安全か、車の轍によって環境に悪い物質が出てくるおそれはないか、鉄や銅の金属類はこれだけの施設を作り、お金をかけて取り出すほど経済性があるのか、など疑問点はいっぱいあります。  

 これをエコタウン事業とし、サーマルリサイクルを推進する方針には疑問もいっぱいありますが、調停の申し出をするまでは、産廃現場の原状回復は豊島住民でも無理だろうと思っていた産廃の山が島外に搬出されるのですから、感無量ではあります。

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