豊島事件と産廃問題

No.31 直島環境センター見学記  2003・10・27

 「ガス化溶融はもともと欠陥技術だった」という話を聞いて以来、直島の中間処理施設を見学したいとずっと思っていました。

 今年の9月18日から豊島産廃の中間処理が本格稼働に入りました。それに伴って直島の三菱マテリアル敷地内にある香川県環境センターの見学もできるようになりました。

 きのうの素晴らしい秋日和のなか、行楽には目もくれないで(^^;)、直島の環境センターの見学にいってきました(といっても、午前中は直島コンテンポラリーミュージアムの見学をして、ピカソの評価に苦しむ1950年代の庶民の気分を味合った後の見学でしたが・・^。^)。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 直島は人口3600人の小さな島です。江戸時代は天領でした。塩田があったからでしょう。大正時代に三菱マテリアル直島製錬所ができてからは、企業城下町となっています。そして現在の直島は、ご多分にもれず銅の製錬が不況になるにつれて島の人口が減り続けているという状態です。

 現在の直島はとても変わった島です。三菱マテリアルは島の北側、岡山県側にあるのですが、その周囲の山は亜硫酸ガスの影響か「はげ山」です。これでもよくなったそうで、何度植樹をしても根つかないそうです。

 そして、島の南側は教育産業で有名なベネッセによる直島文化村になっています。建築家の安藤忠雄氏の設計によるコンテンポラリーミュージアムや付随する施設、自然の中にもいろんなオブジェが配置されています。

 
<ミュージアムの中庭から瀬戸内海を望む。これもピカソも悩みそうなオブジェ>

廃屋をそのままアートした「家プロジェクト」も4軒あります。新たなミュージアムも建設中で、現代アートの一大拠点をめざしているようです。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 こんな小さな島ですが、直島町営バスが運行されているので、環境センターの見学をするにも、コンテンポラリーミュージアムに行くにも便利です。バス同士が離合するとき、道のまんなかでとまって、「そっちのバスの前から2列目あたりに、このバスのお客さんの帽子の忘れ物がないか?」と運転手さんどうしが話していて、そして、見つかった!向こう側のバスの運転手さんがバスから降りて帽子をもってきてくれた時は、みんな拍手でした。(^o^)//"""  

 こうしたのどかなバスに揺られて、北端にある三菱マテリアルの工場敷地へと向かいました。敷地内は撮影禁止です。

 
<この門をバスで入って、マテリアルの工場群を抜けた丘の上に直島環境センターがある>

 三菱マテリアルの施設は古い工場施設が多く、「よごれた灰色の工場群」ですが、その中で「新品ピカピカ」、きれいなブルーと黄色に塗られた「直島環境センター」の6階建ての建物はちょっと異質でした。

 日曜日は見学日和です。昨日は午前中に120名を越す見学の人がいたそうで、説明をしてくれるお姉さんもバタバタ状態でした。午後の部はわたしたちともう一組の計2組の団体さん。総計30人〜40人程度でしょうか。モニターをみた後、中間処理の説明を聞きます。そしてその後、実際の施設内の見学です。

 ガス化溶融炉や豊島の前処理施設などを何度か見学していたので、大体の溶融処理の様子はわかっていました。

 簡単にいうと、豊島から運搬船「太陽」で運んできた産廃を小さく砕きます。これらを1300℃の回転式表面溶融炉で完全燃焼させます(この規模の縦型溶融炉は直島にしかないそうです)。その結果生成されるスラグや金属類を利用するので「リサイクル産業」であるという位置づけになっています。「エコタウン事業」に認定され補助金を受けています。

 
          <これが直接溶融炉の模型>

 1300℃もの高温で燃やすので熱が発生します。この熱を回収するというのがサーマルリサイクルです。蒸気を利用してボイラーを回し、発電します。「売電によって収益をあげている」ことを説明するときの説明者はいつも誇らしげです。直島では売電はせず、施設内の発電に利用しています。ついでに太陽光発電装置もつけています。事務所の電気程度はまかなえるそうです。

 高温での溶融の結果、ダイオキシンはほぼ分解します。というのが大規模焼却炉の2番目の自慢点です。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 「どんな成分が含まれているか分からない。野焼きされ、そして、長い間野積みされてきた」。このような豊島産廃の処理は科学と技術の粋を集めた(未完成の技術ですが)ガス化溶融しか手段がなかったのかもしれません。でも、全国各地の産廃処理に応用できるような技術であるとも思えません。

 豊島産廃処理にはランニングコストや建設費用を含めて500億円の費用がかかるだろうといわれています。そして、溶融処理の結果、リサイクル事業として生成される金属類(鉄、銅、アルミ)は10年間で5億円程度だそうです。

 生成物のメインであるスラグはコンクリート骨材として来年度から県の公共事業に利用するそうです(海砂の採取が禁止されるので、その代わりに使うそうです)。

 あっちやこっちの溶融炉でスラグがいっぱい作られるけど、「用途がない」「ただ同然の値段で売っている」と聞いていたので少しは、救われた気分になりました。

 
     <これが豊島産廃20%、40%入りのコンクリート骨材>

 リサイクルは第一に推進すべき施策ではなくて、リユースやリデュースを第一目標とすべきだと思いますが、廃棄物をゼロにするのは不可能ですから、リサイクル用品はどんどん利用できるようにしてもらいたいものです。

 この施設の稼働による新たな雇用は20名程度だそうで、説明をしてくれた上の写真のお姉さんも直島町から新たに雇用された方だそうです。 これからも頑張ってくださいね。

<< 前へ ====次へ>>

「豊島事件と産廃問題」の目次へ戻る