豊島事件と産廃問題

No.36 廃棄物の定義〜おからと木くず〜2004・5・10 

 「おから」は産業廃棄物です。じゃ、建設業者から受け入れてチップ原料にする「木くず」はどうでしょう?

 一般的な廃棄物のイメージとしては家庭から出すゴミ、事務所から出す事業系のゴミ、 廃自動車などの産業廃棄物を思い描きます。

  法律上(廃棄物処理法)の廃棄物は「ごみ、粗大ゴミ、燃え殻、汚泥、廃油、廃酸、廃 アルカリ、動物の死体その他の汚物または不要物であって、固形又は液状のもの」です。

  で、これに対する国の解釈(平成12年の厚生省環境整備課長通知)は 「廃棄物とは、占有者が自ら使用し、又は他人に有償で売却することができないために 不要になったもの」となっています。

 ということは「有償で売却できるかどうか」がゴミになるかどうかのメルクマールです。
すなわち、お金をもらって処理できる(=有価物)リサイクル品やリユース品は廃棄物 処理法の規制対象外ということになります。そして、同じリサイクル品でも各種リサイ クル法によってリサイクルされる無価の廃棄物は廃棄物処理法の規制対象ということに なります(このあたり、いかにもファジーです)。

 廃棄物関連の法律もいっぱいあって整合性がとれていません。リサイクル・リユース、 ゆくゆくは、「ゴミを元から断つリデュース」をめざしているのですから、規制法であ る廃棄物処理法の対象となるゴミの範囲はできるだけ小さくした方がいいと思いますが、 2年ほど前の「中央環境審議会・中間とりまとめ」では有価・無価を問わずリサイクル 可能物まで含めて全て廃棄物と定義する見直し案を出していました(EU法を参考にし ているようですが、ちょっとヘン。

 範囲を広げる理由として不法投棄問題をあげてい ましたが・・・)。 このように、現行は「有価 or 無価」が大きな判断基準ですが、その判断基準を詳し く見ると「その物の性状、排出の状況、通常の取扱い形態、取引価値の有無及び占有者 の意思等を総合的に勘案して判断する」という「総合判断説」の立場を採っています。

  そして司法で「総合判断説」を採用したのが平成11年3月10日の最高裁の決定です。 このとき判断の対象となったのが「おから」です。

 「おから」って個人的にはけっこう 好きですが、いまどき「おから」の好きな子供って少ないでしょうね^^;

 ですから、最高裁の決定でも「おからは、豆腐製造業者によって大量に排出されている が、非常に腐敗しやすく、食用などとして取引されて利用されるわずかな量を除き、大 部分は無償で牧畜業者等に引き渡され、あるいは、有料で廃棄物処理業者にその処理が 委託されており、・・・・・・本件おからは本号にいう「不要物」にあたり、・・・産 業廃棄物に該当する」といっています。

  「おから」はリサイクルできる(=食べる)のはわずか。大部分は無価どころか有料で 処理をしてもらっているのだから産廃に当たるということです。

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「選別された木くずは産廃ではない」という判決が今年の1月26日に水戸地裁で示され ました。「選別された木くず」とは建設業者から受け入れた木くずです。チップ用に分 別して売っているんでしょうね。

  この木くずを引き取ってチップ化し販売していた業者は、最初は木くずを買いとって いたそうですが、次第に無償で引き取り、やがて、処理費用を受け取ったりするよう になりました。

  ここには問題が2つありますよね。
@有償で売っていた木くずも値崩れしたのか、次第 に処理費用を払わないと処分できなくなったということ。
Aそして「無償での取引」と なるととたんに廃棄物処理法の規制対象となって、ややこしい手続きや余計な費用(廃 棄物処理用の規制基準にあるような設備が必要になるので)がかかるようになることで す。

  水戸地裁では、これらの木くずを「資源有効利用促進法」に基づいて、排出事業者が適切に 分別し、再資源化すべきものとみなされていたと判断しました。そして、「「総合判断説」の有償で入手したかの基準は明確で有効な基準ではあるが、絶対的なものではない」としています。

 Aさんにとって不要なものもBさんにとっては有用ということがありえます。建設業者 にとっては不要な木くずでも、チップ業者にとっては原料として取引価値があったわけ です。これはゼロエミッションの考え方ですよね。この再利用の輪をじゃまするような 廃棄物処理法になってしまっては元も子もありません。

  自分にとって不要なものであっても捨ててしまうのはもったいない、と思うことがあり ます。こんなとき、タダでもいいからもらってくれる人がいると有り難いものです。

  これを事業単位で考えると無償(逆有償に近いのかもしれない)というのはキツイ点も ありますが、それでも「リサイクル推進のため再生資源として扱われている実体があれ ば、有償で売却されるものでなくても廃棄物に当たらない」と判断したことはリサイク ル〜ゆくゆくはリデュースを進めるうえで意義があると思います。

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