豊島事件と産廃問題

No.6  パソコンの料金前払方式

 家庭から出されたパソコンは一般廃棄物、事業所で出されたパソコンは産業廃棄物となり別々に処理されています。これは経済的には非効率きわまりない制度です。 

 2001年4月から家電リサイクル法が施行され、テレビ・冷蔵庫・洗濯機・エアコンの4品目は家電小売店での料金後払いによる回収にかわりましたが、この制度は廃棄時に廃棄料金を徴収するわけですから、数千円を惜しんで不法投棄を増やしてしまう可能性があります(実際、不法投棄が増加しているそうです)。これに対し、家庭用パソコンのリサイクルは商品購入時に価格に上乗せして徴収する料金前払方式を採用する方針が固められました。費用は2000円から5500円となる見通しだそうです。2004年から施行予定の自動車リサイクル法でも同じ方法で始める予定だそうです。

 企業は、消費後の使用済み製品にまで責任を問われるようになりました。これを拡大生産者責任(EPR)といいます。2000年に制定された循環型社会基本法でEPRの考え方が導入されています。最終処理の費用まで価格に含まれるようになると(不法投棄以外の方法で)最終処分費用を削減するようなインセンティブが働くはずです。メーカー側でもリサイクル費用削減につとめます。リサイクルできる体制が整備されます。

 ただ、企業側から見ると徴収した費用が課税対象になり、価格に転嫁されると税額分を消費者が負担する形になる恐れもあります。「前受金収入」となるので利益になってしまうからです。新品のときに徴収してもリサイクル費用に充てるのは510年後なのでその間プールする将来充当方式だと次期に繰り越した分は利益とみなされて課税されてしまいます。税法上の検討も必要になります。

 これは家庭用パソコンについての制度です。事業用のパソコンリサイクルは20014月から始まっています。法律の規定による前提が経済的非効率を生んでいることになります。廃棄物問題にしても地球温暖化問題にしても、経済的に効率的である方法が法的実効性をもつことが必要です。専門家は自分の専門分野にだけこだわりますが、環境問題はあらゆる分野からの総合的なアプローチが必要だと思います。

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