豊島事件と産廃問題

No.９　ガス化溶融炉とは？〜豊島の処理も始まります〜　　　2002･9･6 　

　 新エネルギーのひとつである廃棄物発電の2010年の導入目標は、1996年度の5.5倍の500万キロワットです。現在の風力発電や太陽光発電の普及がせいぜい30万キロワットですから、随分多いです。新エネルギー導入目標の35％に相当します。 廃棄物発電は、ゴミの焼却熱を熱源として発電するシステムです。1965年にはじめて導入されました。

　現在、全国約1900カ所のゴミ焼却施設のうち発電を行っているのは10％にすぎません。小規模焼却炉が多いからです。そのうえ小規模焼却炉からはダイオキシンが発生するという大問題があります。 これら従来の焼却炉がゴミを約800℃で焼却するのに対し、ガス化溶融炉はまず、ゴミを450℃の無酸素状態で蒸し焼きし、可燃成分を熱分解してガス化する。つぎに、そのガスを燃やして、残った不燃成分を約1400℃で溶融してしまうものです。 高温のためダイオキシンの発生が極めて少なく、排熱を利用した発電の効率も高い。残った溶融残さ（スラグ）は路盤材に混ぜて再利用できるので、埋め立て処分にまわる廃棄物がほとんど発生しない。・・とダイオキシン問題と最終処分場不足を解決する救世主のようにいわれています。

　 実際に稼働しているガス化溶融炉は、まだ数基です。その中で一般廃棄物利用のガス化溶融炉は比較的順調にいってますが、廃自動車のシュレッダーダストを処理するガス化溶融炉は、苦戦しています。シュレッダーダストはこれまで埋め立て処理をしてきたため、産廃の成分や燃やした場合の性状の変化などのデータがほとんどないためです。実験工学の段階なのです。

　 来年から、瀬戸内海の豊島に不法投棄された５０万トンの廃棄物の中間処理が始まります。隣の直島に運んで、回転表面溶融炉で溶融処理、その後、ロータリーキルン炉で焼却します。溶融処理により生成されたスラグは路盤材に利用する予定ですが、具体的には決まっていません。飛灰からは、重金属を回収することになっていますが、何しろ長い間不法投棄されていた雑多な廃棄物を処理するのですから、やってみないとわかりません。

　 でも、もっともっと大事だと思うのはむやみにガス化溶融を推進すると、ゴミが足りなくなることです。広域処理が必要ですので、ゴミの発生抑制という循環型社会の大前提がなしくずしになってしまいます。 自動車リサイクル法で定義されているサーマル・リサイクルはむやみに推進すべきではないと思います。

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