研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

No.13 シンポジウム「なぜ合併しなきゃいけないの?」 2002年9月6日 高松市市民会館

札束で頬をひっぱたくやりかたは原発と同じ by 橋本大二郎高知県知事

 いま、最終バスに乗り遅れまいと各地で市町村合併の動きが急です。高松市でも田原総一朗さんをコーディネーター、パネリストに四国4県の知事、付録に総務省の月尾嘉男審議官という豪華メンバーでシンポジウムが開催されました。

 合併についてあまり真面目に考えたことはなかったのですが、シンポジウムを聞いたついでにちょっと調べてみました。 1965年に期限付きで施行された合併特例法が1999年(平成11年)に改正されました。平成17年3月までに合併をした市町村は以下の特例があるそうです。

@合併前の各自治体の普通交付税の額を合併後10年間保障する。その後5年間で本来減るはずの額まで段階的に減らす。
A合併特例債(70%を交付税措置で国が補填)の発行を認める。
B「地域審議会」を設けて新首長に意見を述べることができる。
C市になる人口要件(5万人以上)を緩和。
D合併協議会設置を請求できる。

 先を争って合併しているのは@とAが目当てでしょう。要するに合併すれば10年間は交付税を旧来通り受けられるし(ここで各議員さんが活躍する)、国が補填する合併特例債を発行できる。 すなわち、もらうお金はとりあえず10年間は保障されるし、借金もOKということです。

 議員さんや首長さんの任期は4年ですから、目先の公共事業等をキープする財源は確保できるというもくろみでしょうか。  このような時限立法を作ってまで合併を国が推進するのは、ゆくゆくは交付税や補助金を減らしたいからでしょう。

 これだけ借金だらけの国なのだから当然そう考えるだろうと思います。市はともかく過疎地の町や村は、とても単独自治体で住民サービスをキープし続けうるとは思えません。

 ですから広域合併というビジョンは方向性としては賛成です。町議会議員とか町役場の職員とかをみてると民主主義を理解している人たちとは思えないような人が多い。

 橋本高知県知事も言われてましたが、その手段として「札束で頬をひっぱたく」ようなやり方、それに交付金ほしさに旧来型の議員さんがのっかかっているという構図が問題なのでしょう。

 住民側にも合併のメリットがあるか、どのような町づくりをするかというビジョンを示さないと、ジグソーパズルのような市町村合併になってしまいます。合併をするには法定の合併協議会を設ける必要があります。香川県はすでに1市が誕生、もう1市が来年誕生予定です。法定の合併協議会も2つあります。

 そのひとつが小豆郡(小豆島と豊島)の3町合併をめざす合併協議会です。3町<土庄町(豊島は土庄町です)、池田町、内海町>のうち、池田町に新庁舎建設を決定したのですが、土庄町議会が協議会の採決を無効とする決議案を全会一致で可決しました。そしてこの10月に住民意向調査を実施し、合併の是非を問うことになっているそうです。

 今は、協議会で作成した「将来構想− 島づくりプラン」を全戸に配布し各地区で説明会が行われているところです。 「将来構想」の中身は、豊島に橋を架けるとか島の南北に2本のトンネルを掘るとか、委員自身が「こんなものはできもしない夢の話」と公言してはばからないアホなものになっています。115億円の合併効果というアメをぶら下げられて、てんでバラバラにそれに飛びつこうとしているという図です。

  特例法の枠組みでの法定協議会の議論ではこうならざるをえないのかなと思うと同時 に、「依存と分配」「ぶら下がり」の構造をまず一掃することが先かなと思っていま す。 10月から18才以上の全住民を対象に賛成か反対かの二者択一のアンケートをし( 実質的な住民投票)その結果で是非が決まることになっています。

 本当はどういう町づくりをするか、地方分権の在り方とかを議論すべきなのに、併特例法のニンジンにつられています。合併後10年間の普通交付税の増額や合併特例債を財源とする事業にのみ関心が向いてしまっています。

  根本的解決は地方に税源を移譲し、地方の自己決定権を増やすしかないでしょうが、税源の移譲も大問題です。いまの税収をそのままの比率で地方に移すと都会に比べて貧しい地方は当然税収も少ないわけですから、いっそう少ない財源になります。 根本的な税制改革が必要になります。なんなら道州制にして、消費税はアメリカのように州税にでもしたら効果的かもしれませんが、なかなか・・・(^^;)。

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