研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

No.14 産業廃棄物問題を考える 〜事業者の立場から〜 2002年9月21日 大阪府社会福祉会館 

                                      講師 宮村隆喜 (株)コートク代表取締役
   

       産廃受け入れ拒否は地域エゴ                                      

  CASA(地球環境と大気汚染を考える全国市民会議)の第]期地球環境大学(9月21日・大阪府社会福祉会館)に参加しました。 地球環境大学については http://www.netplus.ne.jp/casa/index1.htm にあります。

  「第5回 産業廃棄物問題を考える−事業者の立場から−」ということで医療系廃棄物の処理業者である宮村隆喜さん(潟Rートク代表取締役)が講師でした。 廃棄物処理業者というと「ちょっと怖そうなヤカラ」を想像しますが、確かに産廃業者の集まり=ベンツの会合、のようです。ただ、宮村さんは「国産車で行くのは私だけです」というような方です。

  産廃処理施設というのはNIMBY(Not In My Back Yard)と呼ばれる迷惑施設、その事業者側からの意見でしたので、市民団体の講演会などとはひと味ちがう意見でした。

  <印象に残った意見です>

@産廃受け入れ拒否は地域エゴ。
Aもったいないがリサイクル社会をつくる(大阪人はもったいないから、何とか金に ならないかと考えるそうです)。
B産廃業者の許可は首長ではなく、国がやるべき。
C産廃税は反対。
Dリサイクルする製品でメシが食えるように(今は海外から安い製品が入ってくるのでメシが食えない)経済原理を働かせる必要がある。  

  特に@は人によって意見がちがうと思います。 「全てをゼロエミッション」とすることはできない。産廃はどうしても出る、どこかには最終処分場が必要というスタンスはまちがいないと思います。たとえば水銀は北海道しか処理施設がないので広域処理を拒否したら水銀のリサイクルは成り立たないことになります。

 市町村が処理責任を負う一般廃棄物とちがって、産廃は事業者が責任を負います。事業者は経済の原則に従うから、廃棄物処理法は広域処理を原則にしていることになっています。 でも、産廃の不法投棄によって実際に被害を受けるのは地元の住民。原状回復(たいてい処理業者は破産して原状回復能力がない)の費用は国や地方自治体の負担となります。

 豊島の処理施設の建設費は200億円以上かかります。10年以上に及ぶ処理のランニングコスト200〜300億円も県の負担費用です。 もっと大規模な不法投棄(82万立法メートル)が発覚した岩手・青森県境の不法投棄でも、これら負のコストを誰が負担すべきかという難題で頭を痛めているところです。

  広域処理を原則とするなら排出元自治体の責任、排出元企業の責任ももっと追求すべきだと思いますが、どこまで排出事業者の責任を問えるか――事例がほとんどないこともあって不明確だそうです。

 「廃棄物処理という負のコストを地方だけが負担するのはおかしい」という増田岩手県知事の意見に賛成です。いま、岩手では倒産処理業者のマニュフェスト(産業廃棄物管理票)の分析を急いでいるそうです。2600に及ぶ排出事業者の7割の所在地は首都圏です。地域エゴと一言では片づけられないと思いますが・・・。

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