研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

 

No.16  香川木質バイオマス研究会 廃材からアルコール製造・バイオマススラリー燃焼 2002・12・21

<国をあげてバイオマス推進ですが、技術・価格面で勝負するにはもう一歩のようです>

  このような名前の研究会が設立されたことは知っていました。「これからはバイオマスだ」と思っていましたので、ぜひ参加したいと思っていましたが、誰がどこで運営しているのかは知りませんでした。 でも、ひょんなことから紹介してもらって、11月の例会から参加するようになりました。

  今回は、日揮株式会社 産業プロジェクト本部の方がお二人、「木質系廃材からのアルコール製造について」「バイオマススラリー燃料について」というテーマで講演会をしてくださいました。いまの技術で、バイオマスはどこまで可能か−ということがよくわかっていないので、最先端の技術について聞けたのはラッキーでした。

  ★ついでにホテルの玄関で木材チップを使ったストーブを見せてもらいました。これが木材チップかと、現実を知らない私は感激しました。会場のホテルの社長さんもバイオマス研究会の会員さん。これからは廃食品を有効利用しなければ、とのことです。

 日揮鰍ヘ石油のプロジェクト等を行う、業界ではトップの会社です。8割は石油関連プロジェクトだそうですが、これからは化石燃料だけではなく、他のエネルギー源への転換も必要だと考えているようです。「エッソ」と同じです。

 まず、「木くず、食品工場残渣、古紙などからエタノールを生産する技術」について説明がありました。繊維質を含むものであれば何でもOKだそうで、製材くず、おがくず、古紙、ビール粕、茶殻、とうふおからなど今まで捨てられていたモノを原料とします。50トンからエタノール10キロリットルが製造できるそうです。

  ただ、CCA処理といってシロアリ駆除の砒素などを使っている廃材は有害物質が発生するので使えないそうです。建築廃材はCCA処理をしているものとしていないものを分けるようになっているのに、どうしても混じってしまうのだそうです。

  ★2002年12月15日の朝日新聞一面に、環境省がガソリン・軽油に10%アルコールを混合する方針を打ち出したことが載っていました(これで温室効果ガスを90年比1%削減できます)。

 この報道には日揮の方々もびっくりしたそうです。NEDOでも工業用・燃料用エタノール推進を打ち出しているので、何度も官公庁に説明にいったそうです。「予算はつけられるがどうですか」と提言されたそうですが、商業プラントを作るにはあと1年くらいかかると答えたそうです。

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 次は「バイオマススラリー燃料について」でした。スラリー(slurry)って初めて聞いたのですが、水に木炭が混ざった液のことだそうです。 バイオマスをスラリー状態に改質して使う発電方法です。

★ところで、CO2の発生量は、原子力でも風力でもゼロにはならないのですが、バイオマスはゼロなんですね。CO2は発生するけど、後に木を植えると新たなCO2吸収源になるし、木が枯れてしまうのを利用するわけだからカーボンニュートラルということでCO2発生はゼロということになっているそうです(わかったようなわからないような??)

バイオマスは有機性資源として化石燃料の直接代替が可能で、原油を使った既存発電所でもそのままバイオマス発電ができる状態になるそうです。スライドを使って丁寧に説明してもらいましたが、要は、木材を脱酸素・脱水して木炭化、そしてスラリー燃料化して使うということです。 このバイオマススラリーというのは日揮鰍ェ特許をとっている発電方法だそうで、バイオマス燃料の中では最も高い経済性があるそうです。ただ、密度が低いのは事実なのである程度の規模で発電する必要があるそうです。

 技術面がクリアできた後は経済性でしょう。自然エネルギーが商業的に成り立たないからといって、補助金をあてにする推進策では長続きしません。やっぱり最後は炭素税賦課によってランニングコスト面で競争可能にするしかないと思います。

(余談)  この説明をしてくださった方とは後の懇親会(忘年会?)で意気投合して、燃料電池と日本のエネルギーの将来について話しました。「わたしは燃料電池のプロですよ」とおっしゃって、素を固定・運搬する技術はまだまだです。副大臣会議のプロジェクトX「2020年燃料電池車500万台普及、8兆円規模」は無理だろうが、2030年には水素経済の時代になる、とのご意見でした。

 水素を再生可能エネルギーから作るようにならないと水素経済の時代にはならない、ということです。

<原子力の立地は困難です。再生可能エネルギー普及のカギはバイオマスと燃料電池だろう、それに最終処分場逼迫がからんでいるんだ、と改めて確信したクリスマス前の夜でした>

 

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