研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

No.18  「環境と再生〜瀬戸内海を通して〜」 安藤忠雄講演会 2003・7・13

 7月12日、梅雨の合間の晴天の昨日、テレビ放送50周年事業 未来への航海 NHK公開セミナー「環境と再生〜瀬戸内海を通して〜」という長い名前で建築家・安藤忠雄氏の講演会が開催されました。

  安藤忠雄さんは、数年前高卒ながら東大教授就任とか、家もなかを渡るのに雨の日には傘をさす必要がある長屋を設計したとか、ユニークな建築家として有名な方です。「連戦連敗」なんて著書もあります。

 瀬戸内海との関わりは深く、スライドによる紹介では淡路島、小豆島、豊島、直島と瀬戸内海東部の島々にそれぞれ関わりがあるそうです。  阪神大震災後は復興支援実行委員長として、もくれんの花を植える運動を(30万本目は天皇・皇后両陛下に植樹してもらったそうです。

 でもそのもくれんの花が3ヶ月目にかれてしまって大変だったとか・・)、そして、豊島の産廃問題についての調停が成立した後、中坊公平弁護士といっしょに100万本のオリーブを植える運動「瀬戸内オリーブ基金」を設立されています(この運動はなかなか広まらないので、ご自身が5000万円の保険に入って、もしものときには基金に5000万円がいくようになっているそうです)。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜  
 まず、淡路島との関わりは。。。 明石大橋近くに、関空の埋め立てに大量の土砂を使った後の禿げ山がありました。それをゴルフ場にしようという計画があって、そのクラブハウスの設計を依頼されたそうです。

 でも、ここはゴルフ場より国立公園のような場所にして国際会議場など自然と調和した施設にしたかったそうで、依頼をホゴにした。当時ずいぶん恨まれたが、ゴルフ場不振の昨今では「あのときゴルフ場にしなくってよかった」と感謝されているそうです(^。^)

 で、ここにあるホテルは去年イングランドチームがキャンプに使ったそうで、かのベッカム選手が泊まったという703号室にはいまもおばさんがひっきりなしに泊まるそうな。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 そして、直島。この直島という小さな島は三菱マテリアルの城下町という特殊な島です。銅の精錬所で食ってきた島ですが、精錬所は斜陽産業で人口がどんどん減り続けています。

 それが、3年前の豊島調停合意で豊島の産廃を三菱マテリアル敷地内に建設した直接溶融炉で無害化処理をすることになりました(予定では2003年8月から)。この事業が国のエコタウン事業の認定を受けているという経緯があります。銅の精錬所から出る亜硫酸ガスで島の山は禿げ山になっています。。。

 でも、このような企業城下町になっているのは島の北半分で、南側は福武書店、ベネッセコーポレーションの施設がいっぱいある〜直島ミュージアム〜の地でもあります。その設計を依頼されたのが安藤忠雄氏で、福武書店の社長さんとの関わり、現代アート・アーチストとの面白いエピソードも聞かせてもらいました。

 高齢化し、人口が減っているということは廃屋が多いってことです。それら廃屋をそのまま使ったアートも町中のいたるところにあるそうです。でも、現代アートは何がアートなのか凡人には理解しにくいですねぇ。。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 この公開セミナーは教育委員会が後援しており、高校生が学校ぐるみ(建築学科などの専攻ぐるみかもしれない)で参加していました。いま、年功序列と終身雇用制度の崩れたおじさんは元気がないけど、おばさんは元気いっぱい。おばさんがNPOなど利害関係を超えたところで協働して元気を作っていく。

 そして、未来を創っていくのは若者ってことで若い人たちへのメッセージもありました。

★敗戦後の日本はアメリカの豊かさを夢見たそうです。真面目で勤勉な日本人はいっしょうけんめい金銭的な価値を追い続けたが、大量生産・大量消費のアメリカ文明を真似したのは間違いではなかったかってことです。

<建物も3,4倍、長く使えるように、100年使える建築物にする。100年使うためには手入れをする必要がある。メンテナンスをすることによって使う建物に愛情がもてる>

★心を大きくするためには、自分で判断し、喜びを感じ、考えなければならない。目先のことだけを考えていたのでは判断をまちがえる。

〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
 安藤氏は「おまえはかわっているので死ぬまで青春しろ」って関西経団連の△△さん(故人、名前忘れました)に言われたそうです。 「青春のテーマは何ですか」という高校生の質問に対する答えは「建築家なので、心の中に残るものを作りたい。そして周囲の者とともに歩みたい」そうです。

<< 前へ ==== 次へ >>

「研究会・講演会備忘録」の目次へ戻る