研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

No.20 国際シンポジウム 真の循環型社会の実現に向けて
      〜カナダ・ノバスコシア州の資源管理戦略に学ぶ〜2003・8・6

                <赤坂のカナダ大使館です>

 カナダといえば「赤毛のアン」のイメージで、風光明媚なヨーロッパ風の街を想像してしまいます。プリンスエドワード島とカナディアンロッキー、ちょっと寒いところではエスキモーというのが印象の全てでした。

  アメリカが連邦制なのはよく知られていますが、カナダも連邦国家です。地図でみるとすぐ近くに見えるけど実際は片道4時間、かの有名な「プリンスエドワード島」から数百キロ離れた最東端に「ノバスコシア州」があります。人口は約100万人。

 Nova=New,Scotia=Scotland つまり、ニュースコットランドの意だそうです。 そのノバスコシア州環境労働省の廃棄物・資源管理マネージャーのバリー・フリーセン氏が来日されて、カナダ大使館で「真の循環型社会の実現に向けて」というタイトルでシンポジウムが開催されました(実際はこの3月にノバスコシア州に行かれた方の「ノバスコシアを視察して」という講演の方が迫力10倍でした(^。^))

  カナダは国土が広いから廃棄物問題は焦眉の問題ではないように思われますが、国際的な環境意識の高まりの中、安易な埋立に対し、市民からの激しい批判と紛争が頻発したそうです(80年代後半)。

  「埋立が難しいなら燃やしてしまえ」と考えるのも世界共通のようで、地域政府は最新型の焼却炉を提案したそうです。ところがこれが市民運動を一層刺激し、問題を悪化させることになりました。そこで地域政府が問題解決のための「政策提言」として出てきたのが「ゼロ・エミッション・プラン」です。

  徹底した廃棄物の減量化、発生抑制がされました。まず、1989年にカナダ環境長官会議(カナダ各週の環境長官による会議)が「1995年から2000年までの間に廃棄物を一人あたり50%削減する目標」を設定しました。そして、ノバスコシア州では州法(環境法)を制定し、環境長官会議の削減目標を法的に担保しました。

  日本でも「循環型社会形成基本法」というプログラム法が制定されています。その中で@リデュース、Aリユース、Bマテリアルリサイクル、Cサーマルリサイクル、D適正処分という優先順位が定められていますが、何といってもプログラム法。「みんなで守りましょうね」というスタンスにすぎません。

  ちゃんと州法・市条例によって実行性と実効性が担保され、埋立・焼却に頼らずに廃棄物を50%削減したのは、素晴らしいことです。

  〜〜具体的な政策としては〜〜
@全ての飲料容器、その他容器、タイヤ(これはユニーク)へのデポジット制の導入。
A条例によって埋立禁止、野焼禁止の徹底。
B廃棄物の資源化を促進するNPO(資源回収基金委員会)の設置。
C一般廃棄物の過半を占める生ゴミの堆肥化の事業化。
D紙、ビン、カン類、タイヤなどのリサイクル事業化。
E単なる市民参加を超えたスチュワードシップ制の徹底。
F「ローテク」の採用。
Gこれらを補助に依存することなく、自治体の非営利組織によって可能にしている。

  これらはどれも新しい方式ではありません。要するに分別収集が基本です。そして、スチュワードシップという市民参加を徹底させていること、排出者としての責任を果たしていること、そしてこれらの金銭的負担(デポジット)をしていることが特長です。

 ノバスコシア方式の大前提はハイテクならぬローテクの積極活用です。そしてその費用は補助金ではなく、デポジットによってまかなっています。 州都のハリファックス市では廃棄物資源化事業の維持管理に年間一人約8000円使っています。そのうち5000円が市民税として徴収され、残りは各種デポジットによって得られた資金を充てています。

  一方、日本で廃棄物の維持管理費用は全国規模で年間3兆円、一人あたり3万円を税金から支出しています。そして、大規模処分施設の建設は国庫補助金、特別地方交付税などによって建設費の50%〜80%がまかなわれています。壮大なるムダです。

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