研究会・講演会備忘録−印象に残ったひとこと−

No.4  緊急シンポジウム911テロ後の世界と日本
 第2回エネルギー安全保障を考える
 朝日新聞社主催  −20011130日 東京・有楽町朝日ホール−

    <日独米の選択>

 パネリストがロバート・マニング米国務省上級顧問、フリッツ・ファーレンホルト独シェル監査役、十市勉エネルギー経済研究所常務理事、マルティン・イェニッケベルリン自由大学環境政策研究所所長、桝本晃章東京電力副社長、佐波隆光京都大学経済研究所所長、司会は竹内啓二朝日新聞論説委員という豪華メンバーで、印象の残るひとことを選びきれないほどいろんな話があり勉強になりました。それは200112月9日付朝日新聞でもhttp://www.asahi.com/sympo/index.htmlでも紹介されています。

 印象的だったのは「政府の立場を代弁するのではない」と前置きしつつも、まるで政府の政策を代弁するかのような米からのパネリストと独からのパネリストの意見の対立です。独では持続可能な社会に必要なエネルギー政策として再生可能エネルギー普及の目標をきめ、そのための政策を導入している。それも原発に頼らないで脱化石燃料ということで200221日、ついに国内19基の原発廃止を盛り込んだ原子力法改正案を承認しました。

 一方の米は化石燃料は21世紀は使える。石油はまだまだある。技術の進歩を過小評価してはいけない。環境は市場メカニズムを用いるべきと、ブッシュ大統領の代弁者のような内容でした。

 日本人のパネリストでも政府のエネルギー政策を代弁するような立場の方と環境重視へ価値転換をしなければという方と意見が分かれていました。政府は、資源小国日本では原子力は唯一の国産エネルギーになるという立場です。原子力は重要で海外との石油や天然ガスの価格交渉のカードとしても必要だという桝本東電副社長の言葉は実務をされている方としての実感でしょう。

 一方、京大の佐和先生は環境重視へ価値転換しなければならないと、炭素税の詳細について述べられました。環境保全に熱心な北欧3ヶ国とオランダ、デンマークの共通点は十分豊かで教育水準が高いことだと歴史家のポール・ケネディ氏が言っているそうです。

 日本も物質的には豊かになっているのに環境保全にそれほど熱心でないのは何故か。本当は豊かではないのではないか。物や金よりもっと価値があるものがあるものがあるという、価値優先順位を見直す意識を育てるべきとのことでした。

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