消費者がかわらなきゃ!!

No.29 徳島県上勝町の「2020年ゴミゼロ宣言」 2003・11・27

 この9月30日に行く機会がありながら、残念なことに都合がつかずに行けなかった町が徳島市から南西に車で約1時間、1500メートル級の山々に囲まれた人口2000人の過疎の町「上勝町」です。

 この上勝町は環境にこだわる人の間ではとても有名です。いろんなMLに上勝町の名前が飛び交っています。なんといっても『2020年までにゼロ・ウェイスト』を目指すことを9月町議会で可決した町なのですから。

 2020年というと17年後。果たして世の中がどう変わっているかわからない→でも中長期目標としたのでは実効性はない→「2020年までに」と限定することはとても大事なことです。

 9月町議会で「ゴミゼロ宣言」をしたのは、この7月に米・セントローレンス大学のポール・コネット教授が上勝町を訪れたことがきっかけとなったそうです(11月24日付け朝日新聞より)。

 ポール・コネット教授が上勝町を訪れたときの記事は「月刊廃棄物2003年9月号」に載っています。確かに「市町村の主導で期限を決め、『ゼロウェイスト宣言』をすることを勧めた」と書いてありました。 

 これら記事を読んで個人的には、二重にも三重にもびっくりしました。環境にこだわる28人でこの9月にカナダ・ノバスコシア州の脱焼却・脱埋立の廃棄物戦略の現地視察にいって来ましたが、そのきっかけがポール・コネット教授だったそうです。

 このスタディ・ツアーを主催された方がポール・コネット教授と懇意で、「カナダ・ノバスコシア州にぜひ行ってみるように」と勧めたそうです。世の中狭いというか「世界はボーダーレス」だと感じさせられました。

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 ゴミの分別は大抵の自治体でやっていますが、上勝町の分別は半端ではありません『34分別』です。それもゴミ収集車がくるわけではないので、町内唯一のごみ集積所「日比谷ゴミステーション」に持ち込む必要があります。毎日午前7時半から午後1時まで持ち寄ることができます。ステーションには町から委託を受けた町民が常駐しています。

  「上勝町資源分別方法」というちらしを見ると、@アルミ缶、Aスチール缶・・・D透明ビン、E茶色ビン・・・J蛍光管 そのまま K蛍光管 壊れたもの・・・R新聞・織り込みチラシS雑誌・コピー紙・・・というふうに細かく分類されています。

 同じように脱焼却・脱埋立政策をとるカナダ・ノバスコシア州では4分別だけです。4種類に分けたゴミを資源分別化工場に持ち込んで、ここでローテクの利用「人力による仕分け」をします。雇用の創出という面では役に立っています。  

 当局の人の話では「ゴミを出す段階で細かく分けるか、集積所に集めた段階で分別するかのちがい」であって、人口が多いところではゴミを出す段階で細かく分ける方法はいやがられるとのことでした。

 上勝町のようにゴミ収集車が来ないにも関わらず徹底した分別ができるのは人口2000人という「小回りの利く自治体」のよさを利用した方法であるといえます。

 生ゴミは各家庭で堆肥化(コンポスト)します。町が補助金を出し、生ゴミ処理機はほぼ全家庭にあります。生活ゴミの半分は生ゴミだそうです。生ゴミをコンポストするのは減量化の観点からもリサイクルの観点からも素晴らしいことだと思います。都会だと各家庭にコンポストの設置というのは無理がありますが、田舎だと臭いの心配はいらないし、利用すべき土地はいっぱいあるし、田舎のよさを逆に利用した政策です。

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上勝町がこのような徹底した分別に踏み切ったきっかけは「ダイオキシン類対策特別措置法」です。98年に設置した小型焼却炉が排ガス基準をクリアできなくなった。

 ここで、たいていの自治体は広域処理で大型焼却炉を作る方向に向かいましたが、上勝町では「環境汚染を考えると、焼却処分はやめた方がいい」と閉鎖を決定。ごみを細分化することによる徹底したリサイクル化をはかってきました。2002年度のリサイクル率は79%、全国平均の14%をはるかに上回る数字です。

 徹底した分別で焼却ごみは98年度の136トンから02年には61トンと半減しています。でも最終的にゴミゼロを目指すためには「ゴミにならないような製品ばかり作る」企業しか生き残っていけないようなシステムに変える必要があります。

 『環境にやさしい』製品は大抵経済的負担が大きいです。環境にやさしい製品を作って大もうけができるようにお金の流れを変える必要がある。商品を買うのは消費者なのだから、結局、ひとりひとりの消費者の意識にかかっているともいえます。最近知ったばかりの単語で表すと『企業と市民のスチュワードシップ』が大事ということになります(^。^)  

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