消費者がかわらなきゃ!!

No.36 NPOに愛をこめて 〜NPOの税務・会計〜 2004・1・29

 NPO法が制定されて5年くらいでしょうか。現在も月に500件レベルで増えている そうで、1月現在の認証NPO法人の数は15000位に達しているそうです。雨後の竹 の子のごとき増え方ですが、実態は千差万別で、そのうち淘汰されていくNPOも増 えることでしょう。

 先日、「NPO会計レベルアップ講座」というものに参加してきました。よくある NPOのスタッフのための会計・税務の初歩ではなく、NPOをサポートする専門家向 けの講座だったので、けっこう有意義でした。 NPO会計税務専門家ネットワーク(NPO Accounting & Tax Professional Network) http://www.geocities.co.jp/WallStreet/9123/ というNPO支援のNPOも現在立ち上げ中、NPO法人の認証申請中だそうです。

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  どうして1万5000にも及ぶ団体がNPO法の認証を受けようとしているのでし ょうか?手続がめんどうくさい、その後も各種届出が必要なNPO法人の認証を受 けるより、任意団体として活動するほうが身軽なのに?と思えるのにあえて認証 を受けるのはそれなりメリットがあるからでしょう。

  NPO認証=法人格を取得すると、不動産登記を法人名で行える、法人名義の口座が 開けるというメリットはあります。でも不動産をもっているNPOってそんなにあ るとは思えない。 それより介護保険の実施で介護保険事業や支援費事業に乗り出そうというケースが多いように思います。介護ビジネス分野です。

 社会福祉法人の認可を受けると非課税になる分野ですが、社会福祉法人の認可は受け にくい。だから、準則主義で認証の受けやすいNPO法人にしよう、ってところが多い のではと思います(このあたりは節税目的で病院とか社法が運営しているNPOもけっこう多いのではと思います)。

  あと、会費収入で回しているところ(会費は原則、課税対象外)、補助金や助成金を 受けるために法人格を取得するというところが多いのが現状でしょう。 NPOとは特定非営利活動を行う「れっきとした公益性をもつ」団体ですが、公益性をもつ団体だから収益事業をしてはいけないというわけではありません。

 NPOに関与してみて、つくづく思うのは、財務的基盤が弱いこと。収益性のある事業を行う 能力はもっと乏しいところばかりです。仲良し団体の延長線ってところが大部分。

  それでも、それにもかかわらず、財源を確保して財政基盤を強化して自立する必要 があると思います。

収入源としては、@会費収入、A寄付金収入、B事業収入、C助成金、補助金収入があ ります。

Cに頼るのは好ましくない。助成金目当てでは自治体の下請けになってしま い、本来やるべきことを見失うことになりかねません。
@は安定した財源なので会員数を増やすなどの努力が必要ですが、限界があります。
Aの寄付金収入が多いのはうれしいことですが、大規模な事業を行う場合〜たとえば 市民風力発電を行う〜ようなケースでは寄付金で全てをまかなうには限界があります。 出資というような形での借り入れを受け入れるしかありません(だいたいは、私募債 という形式を使うそうです。銀行からの借り入れは難しそうなので)。

 となると、やはり本来事業で収入を生み出すことが必要です。人件費はボランティア で30万円の収益をめざすのではなく、世間並みの人件費や経費を払ったうえで30万円 の収益をめざすように、それなりの工夫をして事業経営をしていく必要があります。

  別の言葉でいえば、「NPOのマネジメント」ということになります。任意団体ではな く真の意味での公益性のある第三の担い手としてのNPO/NGOになるには、そこまで考える必要があると思いますが、毎月500も生まれている新米NPOはここまで考えずに認証を受けているところが大部分でしょう。

 NPOに関する会計基準はかたまっておらず、まだ宙ぶらりんなままです。税務もNOにやさしいどころか、NPOを含めて原則課税にしようという動きもあります。

  それゆえ,そのような原則課税の動きを牽制するためにも、NPOに愛をこめて、経済力を身につけてほしい、そしてエセNPOは淘汰してもいいんじゃないかと思ってい ます。

  税金の心配をするNPOなんて数えるくらいしかないでしょうが、ゆくゆくは税金対 策も考えた本来事業による収益事業を運営できるような、そして、アメリカ並にNP Oが新たな雇用の場になるほどの経済力をつけてほしいと思います。

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 さて、 認証NPO法人になると、毎事業年度初めの3月以内に、@事業報告書、A財産目録、 B貸借対照表、C収支計算書という事業報告書等を提出し、かつ、事務所に備え閲覧 させなければなりません(NPO法第28条)。

 「閲覧させる」というのはNPO=特定非営利事業を行うについての情報公開条項で。非営利事業を行うんだからクリアにしてねって規定です。 企業会計に慣れた人に奇異に映るのはCの収支計算書です。フツウは損益計算書と呼 ばれる類の計算書類です。  

 企業の損益計算書は複式簿記に従って計算されます。NPO法では第27条第二項に会 計簿は、<正規の簿記の原則>に従って正しく記帳すること」と規定されています。

 <正規の簿記の原則に従って>というのは 必ずしも複式簿記ではなく、単式簿記で も出納帳だけでもOKということです。小規模なNPO法人では複式簿記で記帳するの は難しいだろうからという配慮ですが、複式簿記による決算になれた目にはかえって分 かりにくいところでもあります。

 財産目録の作成が必要なので、「一取引二仕訳」なんてウルトラCがでてきて、NP O法人の簿記は全然わからないってことになってしまいます。実際のところ、NPO法 人については会計原則や会計基準に相当するものはなく、これから整備していく分野な のです。

 小規模法人は家計簿並の現金主義、事業型法人は企業会計の損益計算書スタイルでや っているところが多いそうです。

 15000を超えるだろうというNPO法人の実体は、消費税の課税事業者(=課税売上 高が1000万円を超える)になるような法人は(東京などはともかく)地方の県単位でい えば一県あたり数えるほどしかないそうです。

  ですから、実際の記帳はエクセルを使うとか、出納帳だけ記帳して決算だけきちんと する(この決算が分からないときはけちらずに、専門家に頼むことです)ので大丈夫 でしょう。 法人税の申告が不要、最初に書いた事業報告書等の提出が必要なだけのNPO法人でしたらこれでOKでしょう。

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  めんどうくさいのは、法人税法上の収益事業を営んでいるNPO法人の場合です。ま ず、NPO法では@特定非営利活動とAその他の事業の区分経理を要求しています。 法人税法上は政令で定める「33業種」を「継続して」かつ「事業場を設けて」営む という3条件を満たす場合に課税対象となります。

 ですから、NPO法人の事業のうち@特定非営利活動とAその他の活動を区分経理、法 人税法上の@収益事業とA非収益事業を区分経理、ということで課税・非課税で4区 分になることになります。ただ、日常的に区分を意識する必要はありません。決算時 に区分すればOKです。

  「継続して」ということは年に1,2回開催するバザーは継続していることになりま せん(じゃ、3回はどうなるんだろう、という疑問もあります^^;)。「事業場を設け て」というのは通販や委託販売も含まれるのでこれは実質的な条件になりません。 「継続性」要件と「政令で定める33業種」要件には多くのグレーゾーンがありま す。特に請負業、医療保健業、技芸教授業あたりが問題になるケースがおおいそうです。

  NPOの認証を受けたけど、税金を納めるような収益事業を行っていない場合は税務 署への届出は不要です(ただし、講演や税理士、職員の源泉所得税を納付する必要が ある法人は給与支払い事業所の届出が必要です)。

  税金は国税だけではありません。県税、市税という地方税もあります。そして、この 地方税は赤字でも支払う必要のある「均等割」という税金もあるのです(ここ大事な ところです)。自治体によってちがいますが、県税で2万円程度、市税で5,6万円 程度です。

  NPO法人の場合、均等割の減免を利用できるケースが大部分でしょう。ただし、この 減免は毎年申請することによって減免されます。税務署への届出は大部分のNPO法人では無視して大丈夫でしょうが、均等割の減免は大部分のNPOが該当するでしょ うから忘れないように。あと法人税法上の利益が出ているNPOでも営利法人とちが って中間申告は不要です。

 もっと大きなNPO法人になると、消費税の問題があります。課税対象となるNPO法人の消費税の原則課税の計算方法 は頭がベートーベンになりそうなくらい(?)複雑。5000万円以下でしたら、簡易課の選択をするのがおすすめです。

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  最後にどんなに小さなNPOでも必要な源泉所得税について(源泉していない小さな 団体も多いでしょうが、本来はどんなに小さな事業所でも必要なことです)。 たとえば1月31日に講演をしてもらって謝金を3万円払うとします(消費税は無視し ます)。10%分の3000円は天引きして翌月10日(2月10日)までに税務署に納付す る必要があります。 この源泉徴収というのは<個人>に支払う場合に行う制度です。<法人>に対して 源泉をする必要はありません。

 たとえばAさんが個人で受け取るのではなく、所属し ているNPO法人の名義で受け取るという場合には源泉をする必要はありません。 というより源泉をしてしまったら源泉分を返してもらう手立てがありません(NPO法 人が収益事業を行っていない場合には源泉分はかえってきません)。このあたりは間違 えないようにしてください。

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