消費者がかわらなきゃ!!

No.45 NPOは市民社会の担い手? 〜課税の根拠 法人実在説 or 法人擬制説?〜2004・5・12

  今朝の朝日新聞はNPO特集でした。一面には「《NPOが変える》霞ケ浦再生へ、 官・民を橋渡し」とNPO法制定6周年記念記事、そして、特集記事として見開き両 面(3,4面)を使って、「NPO、6年で16,000」というタイトルで非営利活動の歴 史や法人制度と課税、現在進行中の公益法人制度改革まで多岐にわたった論点を取り上 げています。

 すでに認証を受けた法人数が16,000、毎月500件ベースで増加している、そして、5万 くらいまでNPO法人の数が増えるだろうと予測されています。 まさに次世代を担う役割を負っている観がありますが、実体はけっこうお粗末なNP O法人が大部分だろうと思います。

  NPO法人データベース「NPO広場」http://www.npo-hiroba.or.jp/
で主な活動分野や財政規模を見てみると、 活動分野では、「保健・医療・福祉」が全体の約4割を占めています。

 ということは訪 問介護とかディケアとかの分野。社会福祉法人の認可を受けるにはハードルが高い、 でも、新規参入分野として有望な福祉に参入したい、というところが多い(と思う)。

  財政規模をみてみると、500万円未満が全体の約6割と圧倒的に多い。次に1,000万円以 上3,000万円未満が2割弱。500万円以上1,000万円未満が1割強となっています。この上 位3分類が全体の9割を占めています。財政規模というのは財産目録からみた純資産の ことでしょう。ストックの分析でフローの分析ではないようです。

  NPOが世の中をかえる起爆剤になるでしょうか?NPO法人がいっぱいできると市民が主役になる社会が到来するでしょうか?認証NPO法人といっても「エセNPO」 も多い存在するのでは、と睨んでいます。

 人の集まり=法人を作るのになぜNPO法人という形式を選択するのでしょう?どう して有限会社や株式会社ではなくて、NPO法人なのでしょうか? ひとつはNPOというネーミングに引かれて。もう一つか課税逃れじゃないかと思い ます。

  NPOというのは特定非営利活動ですから、「みんなのため、公益のため」が名目。 なんか営利目的の法人と違ってかっこよさそう。自分たちの活動が「不特定多数の者 の利益=世の中のため」という抽象的な美名のもとで正当化されている自己満足のよう な気がします。実体は収益事業が大部分、あるいは受託費を受けるための受け皿とし て法人格を取得しているNPOがけっこう多いと思います。

 もうひとつは課税逃れでしょう。車が故障したときに飛んできてくれるJAF(社団 法人 日本自動車連盟)の会員数は数十万人(あるいは数百万人?)で年会費4000円 は原則通りなら非課税になっているはずです。あるいはNPO法人になっている「日 本ファイナンシャル・プランナーズ協会」は全てのファイナンシャルプランナー会員 から1万円程度の年会費をとっているので総計はかなりの額になるはずですが、法人税は非課税です。

 フツーの法人(株式会社や有限会社など)は寄付金をもらっても、会費収入を集めて も全ての収益が課税対象になります。ところが、学費が高い上に寄付金をつのる学校 法人も、お布施か浄財か訳の分からない収入の多い宗教法人も、社会福祉法人も公益 法人もNPO法人も全て寄付金や非課税です。会費収入も(例外を除いて)非課税です。

  社会福祉法人は税法上の特典は大きいのですが認可制なのでハードルは高い。民法上 の公益法人も主務官庁の許可制なので、こちらもハードルが高い。ところがNPO法 人は準則主義(要件さえ満たしたら、認証すべし)に近い認証主義。

 そのうえ、会社 の設立には資本金という名前の元手が必要なのに比べて、NPOは人的要件が必要に なるだけ。財務基盤は要件ではありません。ですから、「財産目録 資産ゼロ」でも 設立できます。登録免許税も印紙税も要らないのです。

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 じゃ、どうして公益法人等は課税されないのでしょう?それは、これらの公益法人等 が「公益の追求を目的とするものであるため」だそうです。

 公益性は低いと思える公 益法人等も存在するので説得力はあまりないけど・・・・。 じゃ、株式会社や有限会社などの法人はどうして課税されるのでしょう???株式会 社が公益事業をした場合にはどうして課税対象なの?という疑問がわいてきます。

  実は「なぜ、法人に対し、法人税を課税するのか」は曖昧なままなのです。正解はな いのですが、とりあえず税法では「法人擬制説」に立って課税しています。

  「法人擬制説」というのは、法人は株主の集合体にすぎないという考え方です。この考え方に立てば、法人の所得も究極的には個人である株主に帰属することになります。 (でも、1兆円を超える利益のあるトヨタに対しても、町の魚屋さんに対しても同じ 方法で法人税が課税されるのですから、コトはそう単純ではありません^^;)

  法人税は株主に支払われる配当に対する所得税の前取りであるという「法人擬制説」 の考え方に立っているのが日本の税制です。 この考え方だと公益法人等を原則非課税としているのが理解できます。公益法人等は 配当を禁止されています。「非営利」というNPO法の意味は、「団体構成員に対し て利益の分配の禁止、残余財産の分配の禁止」という意味ですから、配当を行わない 公益法人等に対し課税の前取りである法人税を課す理由はない・・・・ということに なります。

  一方の「法人実在説」は、法人は出資者から独立した一個の経済主体であるという考え方のことです。

 自然人と同じように独立した独立した経済主体であれば、その所得 に対して課税があるのは当然ということになります。 この考え方だと税負担はその法人のコストと考えられるので、コストは商品の価格等 に転嫁される必要があります。

 公益法人等の場合、収入源は会費や寄付金である場合 が多いので転嫁が難しい→法人実在説にたっても公益法人等には原則非課税にしよう ということになります。

 ただし、収益事業に関しては普通の会社と同じ市場で競争するのだから、価格への転 嫁も可能だし、「普通法人と同じ条件で競争すべし」という課税の根拠もわかります。 ただ、収益事業に該当するか否かの判断が難しい。

 実際にはかなりの公益法人等が収 益事業か本来事業か曖昧なまま税逃れをしている、のが現状のようで、これを打開す るために「公益法人制度改革」が進行中なのです。

  これまでの法人への課税根拠からは「公益法人等」すべてひっくるめて原則課税にす る理論的な説明が難しいです。一方で課税逃れの公益法人等が多数存在する。

  たしかに明治以来の公益法人制度は時代遅れ。矛盾点が多い。このあたり、どのよ うな制度にしたらいいのか、これから考えていきたいと思っています。

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