消費者がかわらなきゃ!!

No55 公益ってなに?非営利法人制度改革(1) 〜資金調達方法〜  2004・7・2

 どっかで弁護士さんが『「公益」とは「私益」の集まり』と発言していたのを聞いた ことがあります。「公益とはなにか?」と大上段に構えると答えをみつけるのも難しくりますが、「ひとりひとりの満足度を足したもの」って考えると分かりやすくなります。

 「私益」の集まりなのだから、公益を追求できるかどうかも「ひとりひとりの意識」 「ひとりひとりにできることをどう組織化するか」にかかっているのかもしれません。

 ということで、「わたしたちにできること」という視点で、NPOを含めた非営利法人 制度改正をながめていきたいと思います。

  数人が集まって、なにかを始めようと思うとき、まず「先立つもの=資金」が必要で す。企業のメセナとか税金逃れのNPOとかの例外を除いて、大体が「資金力に乏 しいNPOというのが定石です。どのような資金調達方法があるかを考えてみました。

  小口の資金を集める方法として、商法535条による「匿名組合」という方式があります。

  聞くだけで難しくて敬遠したくなりそうな名前ですが、簡単にいうと、『当事者の一方 (匿名組合員)が相手方(営業者)の営業のために出資をして、相手方がその営業 から得られる利益または損失を匿名組合員に分配することを約束する契約』です。

  例えば、Aさんが太陽光発電を始めようとと思っている。でも200万円の資金がない。 ということで一口5万円の出資40口を募る。事業がうまくいかないときは、出資者 はもしかして5万円がゼロになるかもしれないリスクを負うけれども、太陽光発電が うまくいけば毎年数千円づつの配当を受けとって、10年で元がとれる。10年以上稼働 できると儲けがでるかもしれない。このような仕組みです。

たとえが、以下のサイトはアクターを応援するための匿名組合契約です。
 http://www.yonotamehitonotame.com/toshi/kumiaia6.htm

  あるいは、以下のサイトは個人が不動産を買うための匿名組合方式です。
いわゆる「不動産の証券化」といわれる方法です。 http://www.kindaika.jp/q&a_012-2.pdf

 報道で聞いたことのある名前としては、去年破綻した足利銀行の国有化スキームでも 使われています。http://www.shimotsuke.co.jp/hensyu/kikaku03/asigin/kanren/040410.html

いろんな方法がありますね。

 「匿名」というと税金逃れの金融商品のようなイメージがありますが、そういう意味 ではなくて、「営業者」だけが対外的に活動し、出資者(匿名組合員)は権利義務の主 体にならない、名前を出さないので、「匿名組合契約」というのですね。

  市民発電をやっているNPOなどが、どのようにして資金調達をしているのかずっと 不明だったのですが、この商法上の匿名組合方式を利用しているところが多そうです。  実際に風力発電への出資を募っているNPOもあります。

自然エネルギー市民ファンド http://www.greenfund.jp/shirakami_risk.html
NPO法人グリーンエネルギー青森 http://www.ge-aomori.or.jp/windmill/fund_detail.html
調べてみるともっともっとあるのでしょうね。

  営業者(=出資を受ける方)というのは株式会社か有限会社でもよくて、このような 法人形態をつくっておいて、広く市民から匿名出資金を募ることもあるようです。

  出資金というとその会社の資本のようなイメージですが、それは違います。どちらか といえば借入金でしょう。でも、返済義務はないから資本と負債の中間的な性格をも っているようです。

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このあたりになるとちょっと専門的になりますが、「匿名出資金等の拠出金が資本か 負債か」というのは現在進行形の「非営利法人改革」でも議論されています。

◆6月26日第14回有識者会議議事録(出資型非営利法人を巡る議論)
 http://www.houjin-ombudsman.org/sympo0515/gijiroku0617.htm

NPOをはじめとする公益法人等は解散の場合、残余財産の分配ができないので、こ れら拠出金を返還するか否かというのは大事な議論になります。

  あるNPOが解散する。債権者が複数いた。という場合は、匿名組合員の拠出金はこ れらの債権者に劣後する。出資に近い性格です。 でも拠出した財産がかえってくるだけと考えると、債権に近い。

  と、専門家も頭を抱えている論点でもありますが、5万円を負担しても自然エネルギー発電に寄与したいと考えるエコロジストの出資者にとっては、もし事業が失敗した としても5万円のリスクで済む。うまくいけば配当がもらえる。

  そう考えると寄付金や会費の形式でNPOに寄与する(リターンはほとんどない)よ りもリスクはあるけど、楽しみもある「ワクワクorドキドキ投資」になりそうに思い ます。

 いろんなところで市民自然エネルギー事業に関わる新たな動きが出てきているようです。

 一口でも出資ができるように貯金に励みましょうか?

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