エネルギー政策と京都議定書

No.12 改訂地球温暖化推進大綱 2002・5・12  

 今年9月に南アフリカのヨハネスブルクでサミットが開かれます。その環境サミットで京都議定書の発効が予定されています。アメリカは議定書から離脱しましたが、日本は批准する予定です。京都議定書が発効すると温室効果ガスを90年比6%削減するという国際公約を守る必要がでてきます。

 その目標を守るための基本方針が「地球温暖化対策推進大綱」です。もともとは1998年に決定されたのですが、CO2増加に対し、「原発20基増設」を前提にした政策で、どう見ても達成できなくなったので、今年の3月19日に改訂されました。

 大まかにいうと、森林吸収による削減で3.9%、京都メカニズムにより1.6%、国民努力によって2%の削減を目指すことにしています。そのポイントがエネルギー関連のCO2排出量の抑制です。目標では±0%ですが、なにしろ、2000年時点で既に10%増加し、現状のままでは2010年には13%以上の増加が見込まれているのです。

 エネルギー関連CO2の削減対策 これをまとめると下の表のようになります。新聞でも話題になりましたが、ホントに細かな対策です。「一日一時間テレビ視聴を減らす」「シャワーを一日一分へらす」「炊飯ジャーの保温をとめる」等々・・・。こんな政策で数字合わせをしながら、作った人達も空しかったことでしょう。

 要するに、「国民各層の努力」も「産業界の自主的行動計画」も「CO2排出の少ない発電方式への転換」も政策的な裏付けがありません。

 改訂地球温暖化対策推進大綱では、エネルギー起源のCO2排出量を産業部門で4億6200万トン(7%削減)、民生部門で2億6000万トン(2%削減)、運輸部門で2億5000万トン(17%増)に削減することを目標としています。つまり、産業と民生の減少分で運輸の増加分を相殺する形になります。 従来の大綱の対策だけでは7300万トン増えてしまうため、追加策として@燃料転換により1800万トン、A省エネ対策により2200万トン、B新エネルギーの導入により3400万トンを新たな削減目標としています。

 この中で産業部門は経団連が作成した自主行動計画の90年比±0%に基づいています。旧大綱の±0%から一転、7%削減となったわけですが、その多くは石炭火力発電所から天然ガス発電所への転換をみこんでいます。発電効率が高いので、同じ発電量ならCO2排出量は半分程度になります。でも、石炭火力発電が一番安いのです。電力自由化のなか、値下げ圧力が高まるわけですから、整合性のある政策が必要です。

  民生部門は家庭やらオフィスやらを含むわけですから、自主的取組も規制的手法も届かない部門です。でも一番は電気でしょう。電気は使いやすい二次エネルギーなので、今後も使用量の増加が見込まれます。いま、私たちが環境にやさしい電気を選ぶ方法は限られています(たぶん、グリーン電力基金という一口500円の自然エネルギーへの寄付か、無理して太陽光発電設備をとりつけるしかないと思います)。でも、2007年に電力が完全に自由化されると「値段的には割増だが、環境にやさしい」グリーン電が選択できるようになってほしいと思います。

  運輸部門はもっと大変です。「自動車のトップランナー方式」や「公共交通機関の推進」など対策を講じてようやく17%の増加に抑える政策ですから・・・。ゆくゆくはガソリン車やディーゼル車を使わないですむ社会にする必要があります。そのひとつが公共交通機関の利用促進やカーシェアリングです。もうひとつが燃料電池車です。いま、トヨタやダイムラークライスラー、ホンダ、GMといったメーカーが開発にしのぎをけずっています。

 自動車用の燃料電池はいま一台あたり数千万円している価格を1/100にまで下げる必要があります。でも住宅用の定置式はほぼ実用化の段階にきています。

  豊島のような離島では、今後電力が自由化される下げと離島料金になるかもしれないし、新規の加入が断られるという事態も考えられます。そんなケースには家庭用の燃料電池が有効です。天然ガスさえあれば送電網は不要です。

 燃料電池車はまた10年くらいかかるかもしれませんが、5月3日のアースディに豊島で走った廃食用油精製代替燃料(BDF)を20%配合した燃料の利用ならすぐにでもできます。ホントに豊島に菜の花を栽培して、菜の花プロジェクトが実現してほしいと思っています。

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