エネルギー政策と京都議定書
日本のエネルギー政策の指針は経済産業相の諮問機関である総合エネルギー調査会の長期エネルギー需給見通しで示されています。一番新しい「需給見通し」は2001年7月に示されたものです。
「どの国でもエネルギー政策は大事な項目である。特に日本はエネルギー資源に乏しい島国であるという特殊性がある。にも関わらず、政策の基本になる法律がない」というのが長い間、批判の的でしたが、去年エネルギー政策基本法という法律が成立しました。
でも、この法律は理念を示しているだけですし、「原子力推進」と明記されていませんが、条文の端々に国策として原子力推進を織り込んでいる、というのが立法に関わったエネルギー族議員の方々のコメントです。(電気新聞のインタビュー記事参照)http://www.shimbun.denki.or.jp/
これからのエネルギー政策は競争・環境・安定供給のトリレンマの同時達成が求められているわけですが、経済産業省や電力業界は環境対策・安定供給の立場から原子力を推進したいという立場です。
というのは「原子力は@発電コストが安い、A燃料のウランは政情の安定した地域から供給でき、原子力は国産エネルギーとみなされる、BCO2排出量が少ない、ので優れた燃料である」という立場をとっているからです。 BのCO2排出量が少ないというメリット、そして、自然エネルギーの推進が進まない現状から京都議定書の国際公約であるCO2削減を原子力に頼ろうという思惑です。
でも、@の主張はインチキです。キロワット時あたりのコストは原子力は5.9円で、天然ガスの6.4円、石炭火力の6.5円、石油火力の10.2円に比べて割安だと主張してきました。
原子力が強みを発揮するのは運転開始後かなりたってからです。電力自由化という競争重視の中で、新規立地に時間がかかる(リードタイムが長い)、設備投資が巨額な原子力発電所の立地は財務内容を悪化させるというデメリットがあります。そのうえ、使用済み核燃料処理などのバックエンド費用は2045年までに30兆円かかると試算されています。これまでは総括原価方式をとってきたので、これらのコストを電気料金に転嫁することができましたが、今後は転嫁が難しくなります。
要するに、原子力は自由化競争のなかでは絶対に生き残っていけません。化石燃料に比べて割高な再生可能エネルギーも競争力がないと言われます。しかし、これらの自然エネルギーは推進するための枠組み(炭素税や買取制度の利用など)を作ると両立は可能です。
原子力が生き残る方法は、原子力は安いといってきたこれまでの政策を変えて、原子力保護策(たとえば、化石燃料に炭素税を課して原子力を割安にする、電源開発促進税を税源とする電特会計をすべて原子力に使う)を採るか、原子力は国営にして国策として推進するかです。どちらも難しいと思います。
電力自由化政策のなかでは、原子力は生き残っていけそうもない一方で、原発にとってかわる電源の本命は不在だといわれます。それでも、分散型電源を増やす、再生可能エネルギー普及を促し原発への依存を下げるしか道はないと思います。