エネルギー政策と京都議定書

No.17 京都議定書の削減目標2割上回る 〜アメリカのユニラテラリズム〜 2003・12・28

 一庶民でも身近な廃棄物問題や国内環境税を考えて「小さなことからでも世の中を 変えることができる」と奮戦しているときにどうしようもない空しさにおそわれるの はアメリカの「ユニラテラリズム」に遭遇するときです。

 1991年にソ連が沈んでしまった後は、アメリカ一国主義になってしまいました。ブ ッシュ大統領になってからは、ネオコンの台頭の影響か、「アジアにも米国式民主 主義を根付かせよ」という「神の啓示」でもあったのか、ひたすら戦争ばかりで、 嘆かわしい〜〜。

  そして、もっと嘆かわしいのは、「米国に見捨てられたら日本は国際社会でやって いけない」懸念病にとりつかれた日本政府のやり方です。憲法問題はいろんな立場の 人、いろんな考えの人がいるのだからこそ国会を含めた公の場所での議論(テレビの 討論を見ていると絶対相手の意見を聞き入れない自説の主張だけでディベートになっ ていない)をした上でグローバル時代の「日本式海外平和協力」の仕方を探っていっ てほしいと思います。

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  さてさて、環境問題ではブッシュ大統領は「技術が全てを解決する」と京都議定書 から離脱。いくらEUや日本が頑張って温室効果ガスを減らしても(日本は政策面 で頑張って削減量が減少したのではないけれど)、全世界排出量の1/4を占める アメリカの排出量が増加しつづけているのですから、どうしようもありません。

 アメリカのCO2排出量は1990年比32.4%増です。京都議定書の削減目標は7%減で したから、めちゃくちゃな増加です。この増加量にはお手上げ状態、まったく歯止め がかかっていません。 削減義務を負う先進国全体の温暖化ガスの排出量をみても2010年時点で削減目標(90年比5.2%減)を2割近く上回る見通しです(温暖化防止条約事務局見通し)。

  唯一目標を達成できそうなのはロシアの11.1%減(削減目標0%)です。これは経済 の停滞によるものですから、京都議定書の目標を達成するためには経済的には疲弊す る必要があるとの結論になってしまいます。(*_*)

 「経済と環境の両立」は理論的 には可能、でも、実際には難しいのがよくわかります。 国際排出権取引市場(削減量のうち自国で余った分を足りない国に売る)で最大の 売り手になりそうなロシアが批准を引き延ばし、引き延ばししているので議定書の 発効すらできていません。

 もうすぐ2004年になります。目標年の2010年まで数年を残すのみですから、このま ま発効を延ばしているうちに目標達成は絶対不可能→「みんなでやめよう〜」とな りかねません。

 というより世界規模での目標達成は無理でしょう(この点に関して は、早くブッシュさん抜きのアメリカになってほしいhttp://www.bushorchimp.com/pics.html  

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  京都議定書の将来は黄信号どころか赤信号がともっている。議定書が発効しないと 6%削減という国際公約が義務になることはないのだから日本も温暖化対策をやめ ていいとの結論になるのでしょうか? これは悩めるハムレットのごとき問題です。

 すなわち、「それでも日本やEUは国 際競争力をそぐおそれのあるような(自分で自分の首をしめるような)温暖化対策 や廃棄物政策を行い、環境税をも導入する必要があるのか」ということです。

 経済的にも軍事的にも超大国のアメリカが環境政策を全然採らず、日本やEUのよ うな小さな国だけが一生懸命環境政策を実行して経済競争力を落としていく〜となる と二の足を踏んでいる日本経団連の守旧派の考えもわからないではない〜。

 でも、遠くない将来石油は枯渇します。現在のような伐採を続けていたら森林が破 壊されるも目にみえている。して、日本の経済力が衰えると現在のような食糧を世界 中から安い値段でかき集めてくる食糧政策もとれなくなるはずです。

 国内産業というのは製造業やサービス業だけではありません。農業や林業や漁業も 立派な産業ですし、地産地消に基づいた第一次産業への移行も「経済と環境の両立」 になると思います。

 <結論>
アメリカの政策は何とかしてほしい。どう考えても持続可能な政策ではないのですか ら。そして、資源に乏しくとも日本は持続可能な経済政策(環境重視の視点を経済に 取り込む。そして環境政策に経済原理を働かせる)をやっていくしかないと思っています。

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