エネルギー政策と京都議定書

No.5  長期エネルギー需給見通し

   日本のエネルギー政策の指針は法律(立法)によるべきでしょう。政府(行政)は法律に基づいて政策を実行するのですから。じゃ、日本のエネルギー政策の方針はどうなっているんだろうか、と探してみると・・ないのです。表に示すように各論はいっぱいありますが、総論がない。エネルギー全体をカバーする基本的な方針を定めた法律はないのです。

 政策の基本を

 定めたもの

なし

 省エネルギー

省エネ法(エネルギー使用に関する法律)

 工場、建築物、車・電気製品の省エネ基準な どを定める。

省エネ・リサイクル

支援法

 

 省エネ設備導入への補助など。

 石油代替エネル

 ギー

 

 代エネ法(石油代替エネルギー法)

 「石油代替エネルギー供給目標」を定めるこ と。新エネルギー研究を行う政府の外郭団体

 の設立などを定める。

 新エネ促進法

  

 新エネルギーを導入する事業者への債務保証 などを定める。

 電気事業法    ガス事業法

 熱供給事業法

 各事業者の義務規定、とりわけ安定供給義務など。                     

  石油対策

 石油税法

 

石炭並びに石油及びエネルギー需給構造高度化対策特別会計法  

  石油などに税を課すことその税金を特別会計にプ ールして備蓄や企業への設備投資補助などに用いる ことを定 める。

 原子力振興

 

 

電源開発促進法

  立地手続きの方法などを定める。

 電源三法

・電源開発促進税法

・電源開発促進対策 特別会計法

・電源用施設周辺地 域整備法    

  電気料金に課税することなどを定める。

  課税した税金を特別会計に貯蓄することを

 定める。貯蓄した財源を原発立地自治体や原  子力研究などに支出することを定める。

<エネルギー関係の法律の概要>

 日本は国策として原子力を推進しています。だから原子力振興に関する法律はあります。脱化石燃料の観点から再生可能エネルギー促進もかかげています。だから新エネ促進法はあります。しかし、エネルギー全体のなかでどの程度の普及割合にするのか、エネルギー政策として自由化を推進するならどのような方針によるのかなどは示されていません。

 日本のエネルギー政策の最高位にあるのは長期エネルギー需給見通しです。これは経済産業省の諮問機関から出され、閣議決定されるものです。国会で審議されることはありません。国政なら国会、地方なら地方議会が立法府なのに実際は議員には立法能力は乏しく、官僚や職員が作っています。

 「長期エネルギー需給見通し」も中途半端な見通しにすぎず、増え続けるエネルギー消費をどのように賄うかという視点に立っています。最新の見通しは20016月に出されたものですが、それも京都議定書のCO2削減目標が決まった直後に出された原発20基新増設が実行不可能となったため、1013基に下方修正して出されたものです。

 2010年度においてエネルギー起源のCO290年度と同水準にすることを目標として、省エネルギー対策により600万トンの削減、新エネルギー対策により900万トンの削減、それでも達成できそうにないので電力等の燃料転換を実現する必要があると考えられるそうです。

 この点は温暖化対策推進大綱でも暗黙に了解されている点です。産業界の7%削減は石炭火力発電所の天然ガス火力発電所への転換によって達成することが期待されています。でも政策的な裏付けはありません。

 石炭は幸か不幸か国内炭坑が全て閉鎖したので国内産を考える必要がなくなりました。一番炭素排出量の多い化石燃料は石炭です。化石燃料の中で比較的少ないのは天然ガス。エネルギー供給サイドでは再生可能エネルギーをという議論になりがちですが、現実的な政策として、集中から分散へ、石炭・石油から天然ガスへという転換による削減策も必要でしょう。

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