エネルギー政策と京都議定書
No.6 アメリカのエネルギー政策−小さな政府、物質至上主義−
アメリカで再生可能エネルギー導入の端緒となったのは1978年カーター政権での公益事業規制政策法(Public Utilities
Regulatory Act:いわゆるPURPA法)です。化石燃料需要の抑制・石油輸入低減を目標とした「国家エネルギー法」の一環として制定されたPURPA法は、電力会社に小規模電源施設・コージェネ施設からの電力を回避可能コストで買い取ることを義務づけたので、はからずしも、これらの電源の普及を促進しました。
カーター大統領が提案した法案は議会で審議される間に大幅な修正を余儀なくされたそうですが、まぁ、それも民主的政策決定過程ということでしょう。
これに続く1992年のエネルギー政策法(Eneregy Policy Act of 1992)によって電力市場自由化政策が明らかな形で示されました。アメリカの電力市場は現在25州で自由化されています。アメリカの電力事業は州をまたぐ卸取引は連邦エネルギー規制委員会(FERC)が規制・監督権限をもっていますが、小売段階は州の公益事業委員会(PUC)がカギを握っています。送電網が全米中にくまなく張り巡らされているわけではなく、州によって電気料金にも大きな差がある。PUCの政策は州によって異なっているゆえんです。
そして、現在のブッシュ大統領は「小さな政府、市場にまかせるべき」という市場主義の考えです。物質至上主義、経済成長至上主義を採っています。環境を重視したクリントン政権に対してブッシュ政権は安定供給の確保に軸足をおいています。2001年5月に発表した新エネルギー政策は科学技術至上主義です。technology breakthrough、新技術で解決できると考えています。いまの政策ではそれは原子力と燃料電池のようです。
アメリカ至上主義のブッシュ大統領は孤立主義を採ったウィルソン大統領にイメージが重なります。京都議定書から離脱し、2002年2月14日独自の代替案を示しました。
「CO2排出増加率を経済成長の伸び率以下に押さえ徐々に改善していく。企業の自主的な取組と新技術の開発で達成する」−科学技術至上主義の持論の展開にしかみえません。地球規模で協調するという考えはブッシュ大統領にはないのでしょうか。一国大国主義に落ちいってしまっているようです。