エネルギー政策と京都議定書

No.8  自民党エネルギー政策基本法案

 昨年度に続き、今年の国会にも自民党エネルギー政策基本法案が提出されるでしょう。環境派のNGOは反対しています。「エネルギーの安定供給」「温暖化防止」といったうたい文句がちりばめられ「化石燃料以外のエネルギーの利用への転換」を骨子に据え、一見、その意図が環境保全にあるように受け取れるが、原発押しつけ法とも呼べる内容を持つというのがその理由です。

 法案は、第6条に地方公共団体の責務、第7条に事業者の責務、第8条に国民の努力と、地方公共団体・事業者・国民それぞれに国のエネルギー政策に協力する責務を定めています。国の政策は何かというとまずは安定供給の確保(第2条)が目標で、次に環境への適合(第3条)、市場原理の活用(第4条)となっています。

 安定供給=原子力の推進であり、自治体が国のエネルギー政策に協力する責務を求められるので放射性廃棄物の処分場などの建設が「責務」の名の下に強制されるおそれがあるとの論理です。

  しかし、原子力発電所を建設しているのは電力会社です。現状のまま自由化を推し進めるなら新規立地は止まるでしょう。問題は稼働中の原発の放射性廃棄物処分場です。プルサーマル計画の実施は困難でしょう。プルトニウムの利用が実用化されない限りウランも可採年数70数年の枯渇性資源です。ゆくゆくは原子力の技術維持のため細々と原発を維持していくことになるのではないでしょうか。放射性廃棄物の処分場は廃炉となった原発サイトの再利用なども考えられますが、暴論でしょうか?

 国のエネルギー政策の基本法がないのはヘンです。経済産業省が一番矛盾していると思います。地球温暖化防止のために原子力を推進している経産省が、一方で重油を燃焼させてCO2を大量に排出して発電したダイヤモンドパワー社からの電力を4%の価格差で入札しました(20008月)。賢い官僚の方々のことですからその矛盾はよくわかっているはずですが、3年ごとくらいにポストがかわるので責任をとらなくていいのでしょう。

 エネルギー問題は国会でオープンに審議することが第一でしょう。政策決定過程を民主的にする方が重要で、審議会のご意見番の偉い先生方の意見だけ拝聴して「一応聞きました」というポーズをとる従来の方法を改める必要があると思います。市民参加、パブリック・コメントを取り入れ、政策決定過程をもっともっと民主的にすることが大切でしょう。 エネルギーという重要な項目について国の方針も決めないまま、「完全自由化するから明日から電力会社も競争しなさい」といわれてもできるわけはありません。

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