電力自由化政策

No.10 日本の自由化の方向 

 「資源小国日本に適した電力市場再編を」とよくいわれます。あるシンポジウムで東電の副社長の方が「(国産とみなされる)原子力が立ちゆかなくなると、日本には何もないのです」と言われていたのが印象的でした。目に見えないエネルギー、それも危険をはらんだ原子力エネルギーを凡人が理解するのは困難極まりないことです。

 自由化をめざした最初の諮問の付託は「2001年までに国際的に遜色のないコスト水準を目指し、わが国の電力のコストを中長期的に低減する基盤の確立を図るため、今後の電気事業はいかにあるべきか」という文言です。旧通産省がいう「コストの低減」は産業用電力のコストの低減です。一般家庭用は念頭においていなかったでしょう。それも当時のクリントン政権からの「外圧」が大きかったと思います。

 もちろんコストの低減は大きなインセンティブです。高コスト体質の日本産業の空洞化が叫ばれて久しい。電気代が安くなると主婦としては嬉しいけど、便利な電気をより一層使うようになってCO2排出量を増やすことになってはやぶ蛇です。

 これからのエネルギー産業は環境対策抜きに語れないように、競争抜きにも語れない時代になるでしょう。いままでは電気にかかる諸費用を全て料金に転嫁できたのだから競争が起こりようがなかった。

 競争が可能になるためにはできる限りの規制撤廃が必要になります。電力については独占禁止法の適用除外項目が撤廃されました。電力会社といっても東電のような大きな会社から地方の小さな電力会社まで様々です。20年後には東電系の東京エネルギーと関西電力系の関西エスコエネルギーの2社体制となる(?)とこれも需要家にとっては困った独占体制になってしまいます。

 より一層の競争を促すにはまず分社化でしょう。送電部門の独立性を保つのは簡単なことではありません。やがては、ガス事業や電気事業、石油産業という業界の垣根がこわれてエネルギー産業になるでしょう。

 環境対策としては再生可能エネルギーや原子力についての政策が必要です。それは新たな規制ではなく地球と共生するための枠組み作り、新たな競争ルールだと思います。

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