電力自由化政策
No.12 ベルギーも脱原発
発電量の58%を原発でまかなうベルギーが、スウェーデン、ドイツに続いて原発のフェイズ・アウト(段階的廃止)政策を決定しました(2002年3月2日)。
フェイズアウト政策というのは現在着工中のものを除いて原子力の新規立地は行わず、現在稼働中のうち寿命をむかえたモノから順次廃炉し、21世紀半ばには脱原発をじつげんする段階的廃止策です。ベルギーでは7基の原発が使用をおえても新規原発を建設せず、2025年までに全廃予定です。
一般紙の論調は反原発の色合いが強いので、ヨーロッパでは原発廃止が一般的な流れのように思われがちですが、エネルギー資源に乏しいフランスは原発大国で75%を原子力で賄っています。
環境重視の北欧でもフィンランドは新規の原発も作っています。フランスの電力は垂直統合したフランス電力公社がほぼ独占しています。2005年のEUの電力全面自由化の方針に対し、ブレア首相に皮肉られてもシラク大統領は「ノン」と言い続けています。思うにフランスは信念をもって中央集権国家を維持しているような気がします。
日本は原発の比率がせいぜい30%だからフランスよりは脱原発も可能かなって思いますが、現実には難しいでしょう。現在、再生可能エネルギーは1%にも満たない。新エネルギー発電法(2002年6月制定)による普及策をとってめざすべく北極星は2010年に3%というささやかな数値目標ですから・・・。万一奇跡が起こってEU並みに12%前後をめざす政策をとったとしても原子力に代替できない。
原子力重視は国策です。原子力発電所を民間電力会社が作ると税金が流れ、儲かる仕組みになっています。でも電力市場が2007年に完全自由化されると電力会社は原発の新規立地をしないでしょう。
初期投資の大きい原子力発電と効率を重視する自由化政策は基本的に両立できません。電気事業連合会は国になんらかの補助策を求めていますが(その中には原子力には課税しない炭素税なども含まれています)、経済産業省は冷たく突き放す方針だそうで・・・。
となると国営原子力発電所を作るしか方法がないと思いますが、これは規制緩和の流れに逆行します。2002年8月末に東電の原発のトラブル隠しが露呈し、社長以下トップト5人が辞任に追い込まれました。これで原発推進はいっそう難しくなるでしょう。
日本では環境重視の電力自由化政策=原子力推進という論調です。でも、これは矛盾です。誰が考えてもわかる簡単な矛盾なのに経済産業省のキャリア官僚は自分が属するセクションの維持策を任期の3年だけ考えているだけです。
日本も遅ればせながら2050年にはフェイズ・アウトになると睨んでいるのですがいかがでしょうか??
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