電力自由化政策

No.13 半世紀かけてフェイズ・アウト政策

 原発で発電した後の放射性廃棄物や発電所撤去、核燃料再処理などの費用をバックエンド費用といいます。電力会社の集まりである電気事業連合会は2045年までのバックエンド費用は約30兆円にのぼるとの長期試算を出しました。

 原子力を廃炉・解体した後も放射性廃棄物の処理のために30兆円かかるのです。これは原発の発電1キロワット時あたり2円弱の負担になります。

 いままで原子力のメリットとして@準国産エネルギーであること、A原発の発電コストは安い、BCO2をほとんど排出しない 、という点があげられていました。

各種電源別のCO2排出量(電気事業連合会HPより)

しかし、この試算により「原発の発電コストは安い」という主張が完全な矛盾であることがわかります。LCA(ライフサイクルアセスメント)レベルでは、CO2を排出しない原子力はベースロード電源としてCO2削減への寄与が大きい。

 しかし、放射性廃棄物問題に費用面での問題、パブリック・アクセプタンスの困難さ、そして、電力自由化政策との整合性を考えると、原子力を基軸とした持続可能なエネルギー安定供給は無理です。いままで無理に無理を重ねて原子力推進、そして、プルサーマルを推進してきましたが、東電の事故隠し問題もあってプルサーマル計画は大幅な見直しが必要になります。  

 現在52基が商業運転中です。現在着工中のものが数基あります。これら現在着工中のものを除いて原子力の新規立地は行 わず、現在稼働中のうち寿命を迎えたものから順次廃炉し、21世紀の半ば頃には脱原発を実現する段階的廃止策をフェイズアウト(phase out)政策といいます。    

 スウェーデンに続いて、ドイツ・ベルギーも脱原発を宣言しました。日本の場合、すぐに原子力全廃というわけにはいきません。エネルギー資源に乏しい島国ですから、原子力にかわる何らかの国産エネルギーが必要になります。

 とりあえずは天然ガスを利用した燃料電池、ゆくゆくは再生可能エネルギーを利用した水素エネルギーでしょう。競争重視のなかで、原子力発電所の新規立地はますます困難になると思います。既存原子力発電所は稼働期間を40年と想定していますが、アメリカのように60年使用することも可能でしょう。

 このように、既存原子力発電所の耐用年数をできるだけのばし、その間に水素エネルギーへの移行を進めるべきではないでしょうか。

 日本は21世紀前半の半世紀をかけて最も重い天然元素であるウランから、最も軽い元素である水素への移行時代とすべきではないでしょうか?

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