電力自由化政策
No.15
送電分離見送りとエネルギー税制見直し案 2002/11/20
<電力会社は垂直統合されたまま残る→結局、競争は促進されないでしょう。それより、環境と競争の両立を考えた政策が必要でしょう>
今朝(11月20日)、日経の一面、右上に「電力自由化 送電分離を見送り」という記事がデカデカと出ていました。自由化は発送電分離ではなく、会計分離程度になりそうです。
5年後をめどに電力小売りを完全自由化するという方針は今年の4月に示されていました。(No.11に書いています)
電力という同時同量が要求される商品をどのような形で(巨大電力会社の垂直統合をも解体するか、という点も含めて)自由化するかは「秋の陣」に持ち越されたというのは7月頃に話題になっていましたが、東電をはじめする原発不祥事次々発覚問題で自由化議論はすっかり影が薄くなっていました。
コテコテの文系人間なもので、電気が何か未だによく分からない。「電気って何?」ときくと「エネルギーの元」という答えが返ってくるので、多分そうでしょう(^^;)。コンセントにプラグを差し込むと電気製品が動く。
でも、各家庭まで、各コンセントまで、電気を供給するためには、巨大発電所で発電した電流が、送電網を通って、変電所を通って、そして、電柱からの引き込み線を通じて各家庭に配電される必要があります。
電力小売りが自由化された場合、送電網をどのように扱うかが最重要問題です。各新規参入者が自前で送電線を引けばいいのですが、それは誰が考えても不経済。いわゆる規模の経済というヤツです。
ですから、現在、電力会社が保有している送電網〜自然独占である送電部門〜を別会社にする、というのが公平な競争が起こるための前提条件です。イングランドのように送電網の所有も運営も電力会社以外の独立組織が行っているケースもあります。もっともイングランドの自由化は非効率な国営電力会社からの民営化でしたので、株式会社制を採る日本とは異なります。
そもそも自由化は、「国際的に遜色のないコスト水準を目指し、わが国の電力のコストを中長期的に低減する基盤の確立を図るため、今後の電気事業はいかにあるべきか」という1997年7月の通産大臣からの諮問の付託により始まりました。総括原価方式に守られ、国際的に高コストな電気料金を引き下げようというのがねらいです。
ただし、通産省(現経済産業省)いう料金引き下げは企業向け料金であって、家庭向けではありません。単純に考えて、競争を促進して料金引き下げを第1のねらいとするなら、安い化石燃料源がいっそう増えることはまちがいありません。
現に参入を検討している企業は化石燃料を使う企業が多いです。経済産業省ビルの入札に東電が負けたことが話題になりましたが、落札したのは化石燃料を使って発電する企業でした。温暖化対策を唱える経産省なのに大いなる矛盾です。
規制緩和という意味では、官の規制を少なくして、民間会社間の競争を促すというのが望ましいと思います。しかし、競争は環境(温暖化問題)と両立する必要があると思います。ですから、環境と両立できるような枠組みを作って規制緩和をする必要があると思います。
それは燃料電池や再生可能エネルギーに対する規制緩和や普及促進策でしょう。11月19日に、エネルギー税制の見直し案がまとめられました。現在は非課税の燃料用石炭に対する課税や石油税の増税等が掲げられています。ガス業界や石炭火力の割合の大きい電力会社は負担増となるので反発が予想されているそうです。
でも、これらのエネルギー税制の見直しを第一歩として、鉄の壁のような道路特定財源まで踏み込み、炭素税・環境税への第一歩としてもらいたいものです。
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