電力自由化政策
No.21 原発の後処理費用 〜結局、原発って高かった?〜 2004・3・25
原子力推進は国策でした。「資源に乏しい日本の国産エネルギーに」というのが30年く らい前の政府の悲願だったのでしょう。分からないわけでもない。
今だってエネルギー の80%以上は輸入に頼っています。中東情勢は相変わらず不安定ですから、また数十年前のようなエネルギー危機に陥らないとも限りません。
エネルギーも食糧も大部分を輸入に頼っている現状は『砂上の楼閣』『砂の器』(用語 の使い方が適切かどうか自信なし〜^^;)状態でしょう。
で、国策を実行する民間会社として各電力会社が原子力立地を推進した結果、電力の 30%程度は原子力発電に頼るようになりました。
規制緩和の趨勢からみて、民間主体 で、というスタンスは崩すべきではないのでしょうが、実行してきたことが国策だった (=通産省のいうままに推進してきた)という矛盾点があります。
原発推進のうたい文句として、「原子力は悲願の国産エネルギー」のフレーズととも に「原子力は他の電源に比べて発電コストが安い(たしか5.9円だったはず)」というセ ールスポイントがあったはずですが、大嘘だったことが判明しました。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
原発の後処理(バックエンド)費用というのは、使用済み核燃料の再処理、再処理工 場の建設費、放射性廃棄物の処分費用のことをいいます。総額は18兆8千億円になる
そうです。このうち約10兆円は電力業界が引当金として回収しているそうですが、問 題は残りの8兆円部分です。
8兆円のうち5兆円はこれから先に発生するだろうという費用(回収システムは未整備)ですが、3兆円分は「すでに発電済み、回収見込みなし」という困った状態にある 費用部分です。
3兆円というのは1キロワット時にすると3〜4円。10年で回収する となると、平均的な家庭の場合で年千円前後の上乗せ負担になる計算になるそうです。
地域独占のままでしたら、電気料金に上乗せされても仕方がない。他の選択肢がない し、賛否はともかく「みんなが使った電気」を発電するために必要だった費用だからです。
でも、この4月から一層自由化の枠が拡大されます。大口需要家は電力会社を選択で きます。新規参入者がこのバックエンド費用を負担しないとなると、一層地域電力会社 は顧客獲得競争で不利になってしまう。大口を片っ端から新参者に奪われてしまうこと になります。
ということで、電力会社は新規参入者も含めて送電線使用料金に含めて負担してもら いたい意向のようです。トーゼン、新規参入者、消費者団体は反対です。
こんな状態に陥ったのは「原発は安い」「地元反対を押し切るため税金を投入しつづ けた」という通産省も随分重い責任があるはずです。それはこれから第二のグリーンピ アになるかもしれない、青森・六ヶ所村の使用済み核燃料再処理工場についてもいえる ことです。
「何をもって公益とするか」「民の役割、官の役割」は難しい論点ですが、これらも 含めて原子力についてもっともっと議論を進めて欲しいものです。
国会議員の河野太郎さんのめるまがにもよく書かれていますが、与党内でも原発やエネルギー問題を問題とするのは禁句のようです。現行の経済産業省の政策が破綻寸前なのは分かっているが、かといってどう変えていいかわからない状態なのでしょう。役人は3年程度でローテーションですから、誰も責任をとりたがらない。
たいていのことは官僚ベースで仕切られています。審議会やパブリックコメントで一 応はみなさまのご意見は聞きました、というスタンスはとっていますが、それだけのこ とです。もっと、もっと議論はオープンにしてほしいし、一方で、原発反対派の人たち もやみくもに反対するだけではなく、代替案など現実的な提言をしてほしいものだと思 っています。