電力自由化政策
No.22 電力自由化はウチ(一般家庭)まで及ぶかな? 2004・4・29
いまも一般家庭が電力会社を選択することはできませんが、大口の需要家はかなりの規 模まで電力会社の選択ができるようになっています。住んでいる地域の電力会社ではな く、複数の電力供給元から自由に電力供給会社を選択できることを「電力自由化」と いいます。
2000年3月から始まった自由化は徐々に範囲が広がり、この4月からは中規模工場や 中小ビルまで電力量ベースにして40%まで自由化されています。
来年4月からはこの範囲が63%まで拡大されます。2007年4月以降は一般家庭も含め て全面自由化されるかもしれません(個人的には、その可能性は低いと思っています が。。。)
基本的には全面自由化に賛成です。一般家庭でも自由に電力会社を選ぶことができる ようにして欲しいものです。自由に選択ができるようになると、少々割高でも自然エ ネルギー発電会社からの電力を買います。ただし、地域電力会社の2倍もの電気代な ら二の足を踏みます。
「少々、高くてもあえて自然エネルギー電気を買う」のはせいぜい2,3割高い程度で しょう。それも「環境に気を使っているポーズをとる企業」と「環境オタクのような 一般家庭」程度しか高い電力は買わないでしょうから、今後どこまで自然エネ ルギーに競争力がつくかがポイントです。
中東問題もあるし、温暖化問題もあるし、国として本気で温暖化対策に取り組むのな ら、「化石燃料を使うと罰金!?」というのは極論としても、価格差を補う政策をと って欲しいものです。省庁間の縦割り縄張り争いはいいかげんにやめて(炭素税を本 気で導入する気があるのでしょうか?環境省と経済産業省、その元締めの財務省さま?)、 ぜひとも本気で取り組んで欲しいものです。
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電力自由化に興味をもったのは必要に迫られたから(自分の研究テーマと違うレポー トを書く必要があったので)ですが、いざ勉強を始めてみると「規制緩和と競争原
理」「環境保全と安定性」「化石燃料に原子力・自然エネルギー問題」と全てが集約 されているような壮大なテーマでした(実は、博士論文のテーマの一つでしたが、未
だによく分からないままです(^。^)。
かつて、「自然独占」と呼ばれるもの(そのまま市場を放置しておくと自然と独占状 態となってしまうような状況をいいます。「規模の経済」がはたらくものに当てはま ります)には何らかの規制があり、独占禁止法の適用除外でした。
でも、航空機、鉄道、 ガスとだんだんと規制緩和の対象になり、電力分野は最後の、そして、最も難しい規制緩和分野になっています。独禁法の自然独占に関する条文も削除されました。
もともとの電力自由化論争は例による外圧で、「日本の電気代は、なんで、こんなに 高いのだ!」と言われたことによります。日本の電気代は英米の倍程度。国際競争力 が損なわれ、空洞化を招いてしまうというのが重い腰をあげる最初の動機づけ(?) でしたから、もともとは、一般家庭の電気代を下げるということは考えていなかった はずです。
それに温暖化問題や国産エネルギーを増やすという思いが強かったはずですから、 「ベースロード電源の原子力」はキープした上での部分的自由化と考えていたはず です(と、個人的には睨んでいます)。
ですが、EUの中では100%自由化している国もあります。原子力は安いというウソ がばれてしまっては、建設に長い年月がかかり、廃炉後もバックエンド費用がかかる 原子力を民間電力会社が推進するはずがありません。
ここが最大の矛盾点ですが、国会でも議論されることはほとんどないようです。 いま、毎日のように報道されている年金問題と同じくらい大事なテーマなのに。。。。
何のルールもなく自由化して、原子力は新規立地ができない、バックエンド費用が捻 出できない、僻地にはどこの電力会社も供給してくれない、送電網の整備に責任をも つ主体がなくなって、しょうっちゅう、カリフォルニアやニューヨークのように停電が 起こる状態になっては自由化もなにもあったものではありません。
5年ほど前に公共政策学会の年次総会の場で「電力自由化」について発表したことが あります。当時は誰だか知らなかったのですが、フロアにいまや、道路公団民営化委
員として有名になった田中一昭・拓殖大教授がいらして、ワタシと目が合うたびにう なずいてもらったのが嬉しかった(自信がなかったもので。。)
http://www.takushoku-u.ac.jp/Gakumu/2003/html/kyoin/03963.html
「この議論は5年くらいかかるでしょうねぇ」なんて言われていました。それから既 に5年以上経ちましたが、議論は進まないままに部分的な「なし崩し自由化」が行わ れているようです。