電力自由化政策

No.24 原子力はパンドラの箱(2) 〜核燃料サイクルってなんだ?〜2004・5・22

  「原発の勘定は割に合わない」というのはいろんなところで議論されています。 巨大な複合施設(?)である発電所の建設には長い時間がかかります。この時間を 「リードタイム」というそうです。

 もともとのlead timeの意味は商品やサービス、資 材などを発注してから納品されるまでに要する時間のこと。通常は日数で表すそうで すが、原発のリードタイムは2,30年でとても日数では表せません^^;  

 地元対策費として1974年に創設された電源三法(電源開発促進税法、電源開発促進 対策特別会計法、発電用施設周辺地域整備法の総称)に基づく交付金・補助金をばら まく必要があります。おかげ様で地元の道路とハコモノは「ぴかぴか」です。

  そして、地元のご理解を得るため(石を投げられるのを覚悟して)説明責任を果たす 必要があります。そして、このような話し合いは「話せばわかる」ことは絶対ありま せん。どこまでいっても平行線のままです。

  原子力発電所の税法上の寿命(償却年数)は確か十数年です。実際に使えるのは30 数年〜40年。ものすごく長く使うと60年ということもありうるでしょうが、1世 紀使い続けるのは無理でしょう。そのうち寿命が尽きます。

  発電を終えた原発は「廃炉」という運命をたどります。使用済み核燃料うんぬんでは なく、発電所自体を5〜10年間の密閉管理を経て解体撤去(3〜4年)する作業です から(素人目には)リスクは大きいそうに思えます。

 原子炉なのだから、高レベル放 射性廃棄物もいっぱいありそうに思いますがどうでしょう。 110万キロワット級の原子力発電所の廃炉費用が約300億円だそうです。 詳細はこちらに書いてあります。http://mext-atm.jst.go.jp/atomica/05020102_1.html

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 昨日(5月21日)の総合資源エネルギー調査会電気事業分科会で使用済み燃料の再利 用などの後処理費用(バックエンド費用)の枠組みを決めました。

  この枠組みというのは、今後80年間で必要なバックエンド費用18.8兆円のうち、これ までの制度で負担ルールが決まっていなかった8.7兆円について、大手電力会社だけで なく新規電気事業者も含めて全ての利用者が負担をしていく制度を「基金方式」でや っていくというものです。

  新規参入者にしてみれば、「なんで過去の発電費用分(3兆円)まで新規参入者が負 担するのだ」「通常のビジネスでは過去分の請求はありえない」との反論が出てきます。 なかなか難しい論点です。

  この「後処理費用うんぬん」の議論のベースになる仕組みが「核燃料サイクル」です。

  核燃料サイクルというのは使用済み核燃料を再処理して、プルトニウムを取り出して 再利用することです。青森県の六ヶ所村に建設されている再処理工場は2006年に稼働 予定です。あと2年しかないのですから、いくらなんでも、そろそろ決めなくちゃ。

  「必要に迫られているので、ぜひとも決める必要があった」ということで「必要は決 断の母(^。^)」です。 再処理工場が稼働を始めると、回収ウラン・プルトニウムは2009年に稼働予定の「プ ルサーマル用MOX燃料工場」でMOX燃料に再処理されて再び、原子力発電所で核 燃料となります。

  すなわち、原子力発電でできたゴミを「ゼロエミッション」する輪が完成することに なります。 ですから、いまされている議論(19兆円のうち、8.7兆円の費用負担方法のなすりあ い)は「核燃料サイクルの輪」を前提にしています。この前提が崩れると、これらの議 論は時間資源の無駄(「モモ」が嘆きそう)にすぎません。

  で、この前提が崩れるかどうか、は不明です。19兆円をかけて「使用済み核燃料の使 い回し」をするより、使ったモノは地下深く埋めてしまった方がずっと安上がりでし ょう。

  「ここまでお金を使って核燃料サイクルをする必要があるのか」は国会で全然議論さ れていないようです。(と河野太郎代議士がメルマガで嘆いていました)。http://www.taro.org/

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