電力自由化政策
No.25 原子力はパンドラの箱(3) 〜脱原発の姿は?地元の自立、フェーズアウト政策〜 2004・6・4
No.23,24で「原子力は最終的にはやめなくちゃ」という趣旨のことを書きま した。でも、それはまだまだ先の話で、とりあえずは電力の3割は原子力をキープ して、現在ある原発から落ちる税金(固定資産税等)や地元に流れる協力金はその まま、と思っている地元も多いようです。
ですから、石川県の珠洲(すず)市のように原発計画が凍結されるとどう対処し ていいかわからない「ふぬけ」状態(賛成派も反対派も)になったり、あるいは 原発を誘致するので周辺市町村との合併協議会から離脱し、38億円の協力金を 要求している山口県上関町というような「原発からのお金頼り」の政策しかとれ ない状態になるのでしょうか(大体の原発立地の地元自治体は合併を拒否しています)。
「三位一体改革」で補助金や交付金が減るので、こうなったら「原発頼み」とい うのでは地方の自立も自律もあったものではありません。残念な地方自治の姿です。
日本中が思考停止状態になっているような気がする。自分で考えずにマスコミの論 調に振り回されているような気もします。 国のような大きな組織とちがって地方だとちょっとした工夫でいろんな試みが できるのに、「活性化という名のハコモノ」を作ることしは思い浮かばないよ うでは情けない状態です。
これは補助金頼みの賛成派だけではなく、「ゲンパツ、反〜た〜い」と叫んでき た反対派も同じです。政府の野党からしてそうですが、「代替案を示す」というの は大多数の日本人には不得意科目なのかもしれません(ワタシも偉らそうなことを いえる立場でないことは自覚しております・・^^;)。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
ウランの推定資源量は270年です。 そして、いま議論の的となっている巨額なバックエンド費用19兆円をつかって核 燃料サイクルをして、プルサーマル方式(プルトニウムとウランの混合酸化物(MOX
燃料)を普通の原発でもやす)で使用しても、300年分にしかなりません。
アジア諸国にはこれから新たに原発を立地するところもあるかもしれませんが、 アメリカはスリーマイル島事故以来、新規原発はゼロだし、ヨーロッパも全ての国 とはいいませんが、フェーズ・アウト(段階的廃止)に向かう国が増えています (現在のところはスェーデン、ドイツ、デンマークくらい)。
原発を「悲願の国産エネルギー」と位置づける日本くらいでしょうか。 そして(税金や電気料金を通じて)直接・間接に湯水のごとく国民のお金を使っ て原発の核燃料サイクルを推進しているのは?
今日までドイツ・ボンで開催されている「再生可能エネルギー国際会議 2004(Renewables 2004)」では以下のように日本は批判されているようです。
宣言文の中に、各国政府は京都議定書の目標を達成するためという ことを言い訳にして原子力発電を増やしてはならない、という一文
が入れられた。
各国政府に対しての要請という形になっているが、 これは明確に日本政府を批判している。
炭酸ガスが出ないからという理由で、使用済み核燃料、または高レ ベル放射性廃棄物を出す原発を増設するという感覚は日本以外にはない。(河野太郎代議士「ごまめの歯ぎしり」より)
何のためにここまで政府が原発にこだわっているのか?政府に意地があるよう には見えないので国の基幹のエネルギー政策をかえるのがこわくて先送りにして いるだけでしょうか。
「再生可能エネルギーでは安定性がない」というならセカンドベストとして、次 の技術革新(たとえば燃料電池などの水素経済)までのつなぎとして、化石燃料の うち天然ガスに転換する政策でもいい。
日本も遅ればせながら「亀の歩みのフェーズ・アウト政策」に転換するような長 期エネルギー需給見通しを作成してもらいたいものです。
フェーズ・アウトに半世紀くらいかかってもそちらの方がずっと持続可能な政 策に思えます。