電力自由化政策
No.7 エンロンの破綻
つい去年までは規制緩和・電力自由化の申し子のように言われていたエンロンが倒産しました。元副社長の自殺、不正経理、ケネス・レイ元会長の証言拒否というおまけまでついて、政治献金問題で大揺れになっています。80年代は天然ガスのパイプラインの会社だったのが、規制緩和の波に乗り、電力・水道・通信事業にも進出。日本にも法人を設立。発電所も建設予定で、黒船来航とまでいわれていましたが、あっという間に破綻して、MMFが元本割れという実害まで出してしまいました(エンロンは世界中からお金を集めたので日本の銀行と中国が損をしています)。
しかし、元NHK米国総局長・日高義樹氏の話によるとエンロンは詐欺事件であって経済活動ではないということです。株価が5,6ドルだったのが買収に買収を重ね、90ドルになったところで会社を友人にゆずった。株を売るために作ったインチキ会社だということです。
その過程でブッシュ政権との癒着があり、帳簿上はGEと同規模になるため会計監査まで不正を行った。中立性の高い監査法人と厳格な社外取締役を中心としたコーポレートガバナンスといえども、本質的には何の役にも立たなかった。これは規制緩和・エネルギー企業という問題ではなく、資本主義の仕組みはだまそうと思えば簡単にできるこわい仕組みだということです。
電力自由化は電気を一商品として扱うことですが、電力取引市場ができて、株価のように今日の電気は1円安なんてことが話題になる日がくるのでしょうか。全ての消費者が電力を選べるようになれば、値段の安い電気or付加価値の高い電気が人気商品になるでしょう。値段が安い=発電燃料が安い、につながります。付加価値が高い=環境性が高いor電力の質が高いということになるでしょう。電気にも松竹梅がつけられることになります。
電力デリバティブ取引などで「投機の対象になる電気」のイメージはまだまだ考えにくいです。電力はネットワーク産業ですから規制を全て取り払うことはできません。水道が断水しても我慢できますが、電気は10分でも停電すると現在の私たちの生活は何一つ維持できません。やはり「生活に必要不可欠な財である」ことをベースにした電力市場再編をする必要があります。競争はもちろん大切ですが投機の対象にするには準備周到にしなければ・・・。